田中亮太「Mikiki編集部の田中と天野が海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。まずはいま話題のニュースから。リアム・ギャラガーが新曲“Everything’s Electric”を2月4日(金)にリリースすることを発表しました! オアシスの名曲“She’s Electric”(95年)をほうふつとさせるタイトルということもあり、これが期待せずにはいられませんね」

天野龍太郎「マジでどうでもいい……。オアシスネタ、さすがにもう飽きました! 気を取り直して、最大のニュースは、2月13日(日)に開催される第56回スーパーボウルのハーフタイムショー予告映像が公開されたことです。F・ゲイリー・グレイが監督、ドクター・ドレー、スヌープ・ドッグ、エミネム、メアリー・J・ブライジ、ケンドリック・ラマーという豪華な面々が出演しており、もはやCMではなく映像作品。特に今年新作をリリースするかもしれないケンドリックに注目ですね」

田中「その一方で、悲しいニュースもありました。ブラジルを代表するアーティストのエルザ・ソアレス、さらにハードロック界の大御所ミート・ローフが逝去。ミート・ローフは、僕の世代だと映画『ファイト・クラブ』(99年)に出演していたことなど、俳優としての活躍も印象深いです」

天野「僕はエルザ・ソアレスが亡くなったことが残念でした。晩年の作品『A Mulher Do Fim Do Mundo』(2015年)なんかはすごくエッジーで、80代の音楽家があんな先鋭的なアルバムを作ったことに驚いたんですよね。ご冥福をお祈りします。それでは今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

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Griff & Sigrid “Head On Fire
Song Of The Week

田中「アップカミングなシンガーソングライターの2人によるコラボレーションソングが〈SOTW〉! 英ワトフォード出身のグリフとノルウェーのシグリッドが共作した“Head On Fire”です。一歩一歩前へ進んでいくような力強いビートの上で、彼女たちの歌声が重なり合うアンセミックな曲ですね。聴いていると、前向きな気持ちが湧いてきます」

天野「気持ちいい曲ですよね。グリフとシグリッドはパンデミック中にオンラインで知り合い、その後直接会って友人になったのだとか。彼女たちはお互いにパワフルなポップソングの作り手として共感しあっていたようです」

田中「各々の作品はそれぞれUKっぽさと北欧っぽさがある点で異なっていますが、ダンサブルであり、インディー感があり、かつウェルメイドなポップスでもある、というところはたしかに共通していますよね。構成は、ファーストバースをシグリッド、セカンドバースをグリフ、そしてコーラスを2人で歌っています。歌詞は〈あなたのことを思って私の頭は炎上中〉という愛情を歌ったもので、とてもホット。2人が劇場で踊りまくっているミュージックビデオも最高です!」

 

GAYLE “ur just horny”

田中「続いては、こちらも勢いのあるニューカマー、ゲイルの新曲“ur just horny”。ゲイルはまだ17歳の米ナッシュビルを拠点にするシンガーソングライターで、昨年8月にリリースしたデビュー曲“abcdefu”が爆発的にヒット中。同曲は、〈あんたの母親も妹も仕事もファック/あんたのクソダサい車もあんたがアートと呼ぶものもファック/あんたの友だちも 二度と会うことないけど/あんたの犬以外全員消え失せろ〉と歌う強烈な〈元カレ徹底否定ソング〉なんです。これが、TikTokなどで10代を中心に人気を得ているわけですね」

天野「そんなゲイルの、“abcdefu”に続く待ち望まれていた新曲が“ur just horny”です。吐き捨てるような歌とロックサウンドが強烈な曲ですね。今回もFワードを連発していて、〈何年もプラトニックだと思っていた友情の一線を越えてしまった時のことを歌っている〉〈相手が私の友人になりたいのではなく、ただ身体が目的だったことに気づき、傷ついた気持ちを曲にした〉のだそうです。“abcdefu”の二番煎じ感がなくはないのですが、否定的感情を飾り気のないロックに乗せてストレートに歌うスタイルがかっこいいなと思っています! 彼女は、果たして〈2022年のオリヴィア・ロドリゴ〉になるのでしょうか?」

 

Uwade “Do You See The Light Around Me?”


天野「ウワデのことは、フリート・フォクシーズの2020年作『Shore』に参加していて知りました。ナイジェリア生まれ、米NYのシンガーソングライターの彼女は、まだ21歳です。クラシックを学んでいたそうで、音楽的なバッググラウンドがかなりしっかりしているのですが、音楽的な特徴は深みのある歌声とインディーフォークサウンド。ミュージシャンとしてリリースした作品は少ない反面、Instagramに弾き語りをたくさん投稿していて、それがまた魅力的なんですよね」

田中2019年のデビューシングル“Nostalgia”から数えて3曲目になるのが、この“Do You See The Light Around Me?”です。プロデューサーは、ボン・イヴェール/ビッグ・レッド・マシーンやワクサハッチーなどを手がけ、ヒス・ゴールデン・メッセンジャーズのメンバーとしてもUSインディーフォークシーンで活躍するブラッド・クック(Brad Cook)。彼らしい電子音とオーガニックな音を融和させたサウンドと、ウワデの何重にも重ねられたコーラスが美しいですね。レーベルはシルヴァン・エッソが設立したサイキック・ホットライン(Psychic Hotline)で、今後EPやアルバムをリリースするのかどうかも楽しみです」