本書はタイトルが示すとおり、武満徹の作曲技法とその美学を彼のピアノ音楽をとおして考察する。著者が示すように武満の作品は彼の言葉を介して定着し、もっぱら言葉によって理解され、共有されてきた。今回、この著作では作曲技法が分析され美学を論じられる。先行研究の検証から始めて、作品を論理的空間の中で自律的運動体として再構築する行為に閉じることなく、作品が書かれた時代、状況へと開きながら作品分析を、楽譜という書き残された形と戦後日本という固有の地勢と照らし合わせて、武満美学の考察につなげていく。著者自身の言葉によれば、「解体的な読み」ではなく「修復、再構成的な読み」だ。