昨年に続き、全国主要都市のクラシック専用ホールを舞台とする本格的な弦楽アンサンブルとの共演コンサートをスタートさせた尾崎裕哉。その初日となった兵庫県のルネサンスクラシックス芦屋ルナ・ホールで2024年8月3日に行われた公演は、ピアノに宮本貴奈、5名で構成された弦楽セクションにフルート奏者を加わった室内楽的な伴奏をバックに、父親である尾崎豊の代表曲の数々や珠玉の名曲カバーも交えながら、シンガーとしてより進化した境地を示した充実のセットリストとなった。
オープニングとして、この日に歌われる曲の一部をメドレー形式にしたインストが優雅な響きの弦楽アンサンブルで序曲的に奏でられると、本人が登場して高らかに歌われたのは“Glory Days”。序盤から手拍子を促し、リズム・パートを集まったオーディエンスに委ねながら会場内の一体感と高揚感を一気に高めた。R&B~ソウル色の強いメロディの魅力が、ビートレスなアレンジを伴ってまた違った形で浮き立った“迷わず進め”、歌詞の中で歌われる英語のカウントに合わせた独特のハンド・クラップも自然と客席から起こった“ロケット”など。自身の新旧の代表曲を今回の編成ならではのスペシャルなアレンジで歌い切ったところで、父親が残した名曲の中でもとりわけメロディアスかつ叙情的な人気曲“I Love You”を。続いても、宮本による力強いタッチのピアノに応えるようにエモーショナルさを高めながら“シェリー”を熱唱し、起伏に富んだ展開で前半を駆け抜けた。
弦楽カルテットが奏でるモーツァルトの楽曲でクラシカルに幕を開けた後半も、メロディアスな中に鋭い言葉の断片が突き刺さってくるような独特の求心力を放ち続ける尾崎豊の名曲を取り上げ、徐々にテンションを上げていくような“Forget-me-not”から、フリーキーな前奏を挟んで躍動的なピアノへと流れ込んで熱量高く歌われた“十七歳の地図”へ。ここで一旦、弦楽セクションはステージから下がり、北海道ツアーを共にした宮本のピアノとのデュオになると、カバー曲として披露したのは敬愛する玉置浩二の“メロディー”。さらにコントラバス奏者が加わったトリオ編成でジャズ・スタンダードの名曲“Fly Me To The Moon”もジャジーに歌い、あらゆるタイプの楽曲を柔軟にこなすボーカリストとしての巧さを垣間見せたのも印象的だった。
そして、再び弦楽アンサンブルが加わっての本編の終盤は、力強いメッセージを放つ“僕がつなぐ未来”を経てドラマチックな曲展開で盛り上げる“Lighter”へ。アンコールでも、自身の“Stay By My Side”に続いて、父親の衝撃的なデビュー曲として世代を越えて聴き継がれる“15の夜”を取り上げ、自身のシンガーソングライターとしての個性と尾崎豊が残した楽曲の最高の歌い手としての天賦の才を両立させた。シンガーとしての力量がシビアに問われる編成にも関わらず、終始リラックスした雰囲気を保ちながら多彩な曲を歌いこなす佇まいにも、改めて彼の器の大きさを感じさせられた。
SETLIST
1. 序曲メドレー
Glory days
十七歳の地図
Forget me not
僕がつなぐ未来
2. Glory Days
3. 迷わず進め
4. 僕が僕であるために
5. ロケット
6. I LOVE YOU
7. シェリー
8. モーツァルト:ディヴェルティメント第1番 二長調 K.136:第1楽章
9. Forget me not
10. 十七歳の地図
11. メロディー
12. Fly Me To The Moon
13. 僕がつなぐ未来
14. Lighter
ENCORE
1. Stay by my side
2. 15の夜
LIVE INFORMATION
尾崎裕哉Strings Ensemble Premium Concert 2024
2024年8月24日(土)東京・築地 浜離宮朝日ホール
昼の部 開演:13:30
夜の部 開演:17:00
(※1日2回公演)
https://www.hiroyaozaki.com/news/tGxrFfSX
https://classics-festival.com/rc/performance/hiroya-ozaki-2024/