©Laiken Joy

 PJの曲には以前からアナログ・シンセの音色やメロディなどに70年代スティーヴィーの影響が色濃く滲む。今作でも“Love’s Disease”をはじめ、ジル・スコットのポエトリー・リーディングを加えたアレックス・アイズレーとのデュエット“Still Believe”、エル・デバージが客演した“On My Way”などでスティーヴィー・マナーが際立つ。

 「スティーヴィーのことだけを特別に意識したわけではなかったけど、彼には凄く影響を受けているから、創作する時にそれが出てしまうんだと思う。機材は、モーグ、プロフェット、メロトロンなどを使っている。エル・デバージは、子どもの頃にデバージにとても影響を受けて、憧れていたんだ。“On My Way”は最初に取り組んだ曲のひとつで、初めはそれほど強いものに思えなかったけど、もしエルに参加してもらえたらアルバムに収録しようと。そして実現した。またひとつ夢が叶ったね」。

 ジョジョとの再共演でMrトークボックスも迎えた“My Peace”では、アウトキャスト“SpottieOttieDopaliscious”のホーン・リフを引用。マーチング100というマーチング・バンドで名高いセント・オーガスティン高校(後輩にジョン・バティステがいる)のOBでもあるPJらしく、ホーンにも少なからずこだわりがあるようだ。

 「ニューオーリンズで育ったからホーンはずっと好きで、いつもある程度は曲に入れてきた。“My Peace”では作っている時にこのホーンが聴こえていたんだ。それで試してみたら完璧にフィットした! 親しみやすさのようなものが感じられる」。

 大切なものを失わないために調整を怠らないという戒めを歌った“Biggest Mistake”などで牧師(ポールS・モートン)の息子らしい側面も見せるPJ。ラストの“The Better Benediction”では、『Gospel According To PJ』(2020年)にも参加したザカルディ・コルテスやウォールズ・グループのダレルのほか、ジーン・ムーア、ティム・ロジャース、サモーを迎えて、ゴスペルに着地する。

 「そう。ゴスペルは完全に自分の一部だから。ルーツとは常に繋がっている」。

 同じく新作を出したトロンボーン・ショーティやタンク・アンド・ザ・バンガスも含めて、ニューオーリンズ勢の活躍も目覚ましい。先だって本国で公開されたマーティン・ショア監督のドキュメンタリー映画『Take Me To The River: New Orleans』のサントラには、PJが5年前に発表した“New Orleans Girl”の新ヴァージョンも収録されていた。

 「あの曲を録音した時はニューオーリンズに戻ってきたところだった。この街の物語の一部になれて、いい気分だったよ。この街にいる人たち、あるいは街を去っていった人たちに、地元で成功することは可能だし、地元にいても最高のものと競い合えると示したかった。ニューオーリンズは進化しているし、これはまだほんの始まりにすぎないと思っている」。

 

PJモートンの近作。
左から、2017年作『Gumbo』(Morton)、2020年作『Gospel According To PJ』(Morton/Tyscot)

 

『Watch The Sun』に参加したアーティストの作品を一部紹介。
左から、ナスの2021年作『Kings Disease II』(Mass Appeal)、スティーヴィー・ワンダーの2005年作『A Time 2 Love』(Motown)、エル・デバージの2010年作『Second Chance』(Geffen)、クロニクスの2017年作『Chronology』(Soul Circle)

 

PJモートンの参加した近作。
左から、マルーン5の2021年作『Jordi』(222/Interscope)、レディシの2020年作『The Wild Card』(BMG)、ベニー・シングスの2021年作『Music』(Sings)、スノー・アレグラの2021年作『Temporary Highs In The Violet Skies』(ARTium/Roc Nation)、ロバート・グラスパーの2022年作『Black Radio III』(Loma Vista)