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阿吽の呼吸のバンドだからこその一発勝負

――そして今回、Wu-Xingのライブ盤『Live at “Cotton Club”』が登場します。収録は2021年7月8日ですから、新型コロナウイルス感染拡大防止のための政府の緊急事態宣言がまたしても始まろうとする4日前のライブレコーディングです。しかもこの日は2ステージ制ではなくて、1ステージ制ですから、同じ曲を2回演奏して、どちらか一つを選ぶということもできません。文字通りの一発勝負が盤に刻まれた感じですね。

「いつ中止になるかわからない状況のなかで、このライブができたのは本当に良かったです。

ワンステージであることは、メンバーの誰もが始まる前から認識していたので、一発で決めようという覚悟が共通認識としてありました。入り組んでいる曲調のものもありますが、パーマネントに活動しているバンドだからこその阿吽の呼吸も生まれてきたので、一発で決めることができました」

『Live at “Cotton Club”』を収録したライブ当日の様子

『Live at “Cotton Club”』トレーラー

――Days of Delightとの交流は、どのように始まったのでしょうか?

「トランペットの広瀬未来さんに誘われて、ピアノの渡辺翔太さんとともに、岡本太郎記念館でのセッション〈Days of Delight Atelier Concert〉に参加したのがきっかけです。

現場で初めて平野さんにお目にかかったのですが、その時の僕の演奏を気に入ってくださって。のちにWu-Xingのアルバムを聴いた平野さんから、〈このバンドのライブを録ろう!〉と声をかけていただきました」

――記念館の庭にある岡本太郎がつくった梵鐘〈歓喜〉を即興で演奏した動画にも見入ってしまいました。あの梵鐘を楽器として叩いた演奏家は、岡本さんのほかに永田砂知子さん、石若駿さんの3人とのことです。

「あの鐘はまさしく楽器なんですよ。本当に貴重な経験でした。どんなことになるのかまったく予想できませんでしたが、収録前に少し叩かせていただいた時から音色の面白さに惹かれて、本番ではとても自由な気分で演奏できました」

岡本健太が梵鐘〈歓喜〉を演奏した〈Days of Delight Atelier Concert vol. 38〉

 

5人の音を循環させグルーヴを生み出す

――Wu-Xingというバンド名の由来は、〈五行〉(陰陽道で木、火、土、金、水の五元素)に因むんですね。

「そうです。アイデアを持ってきてくれたのは、ビブラフォンの宅間(善之)さんなんですが、〈5人それぞれのカラーを大切にしつつ、それぞれの音を循環させることでグルーヴを生み出す〉というバンドのコンセプトにぴったりなので、みんなで賛成しました。

このグループ名がつく前は〈岡本健太クインテット〉という名前だったんだけど、ひとりがフロントに立つのではなく、バンドのひとりひとりを見せたいという気持ちもあって。一応、僕がリーダーではありますが、全員が同じポジションに立つバンドにしたいと思っているんです」

――岡本健太クインテットからWu-Xingになって、大きく変わったことは?

「このバンド名になって、さらにまとまりが強くなったように思います。曲作りに関しても、意見を出しあって、みんなでひとつの曲を作ることが増えました。そうすると、僕が最初に考えていたものとは異なる方向に行くこともありますが、結果的にはもっといいものになるんです。自分の予想を超えて、いい方向に広がっていきますね」

――ビブラフォン奏者の宅間善之さんと知り合ったきっかけは?

「〈Motion Blue Yokohama〉で行なわれた辻本美博さんのソロプロジェクトで一緒に演奏したのが最初です(2016年)。

もともと僕はビブラフォンの音色がすごく好きなので、何かの機会にまた一緒に演奏したいなあと思っていた時に、池袋の〈Absolute Blue〉のマスターから、僕がリーダーでセッションをやってみないかと声をかけられたんです。そこで宅間さんをゲストに呼んだところ、やっぱりとても楽しくて。ずっと仲良くさせてもらっている感じですね」