Klangforum Wien
©️Tina Herzl

今年はクラングフォルム・ウィーンがプロデュース――サントリーホール恒例、夏の現代音楽フェス、今年もナナメ上から開催!

 クラシック音楽界にはシーズン・オフの8月にさまざまな地域で音楽祭が行われている。8月後半の大きな催しと言えば、まずは若い演奏家たちのためのマスタークラスを伴った〈草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァル〉。これは7月後半に開催され、同じくマスタークラスを伴った〈霧島国際音楽祭〉と並んで、すでに40年以上の歴史を持つ老舗の風格を持ち、温泉地の夏の風物としても定着している。そして9月にかけて松本市内を中心に開催される〈セイジ・オザワ 松本フェスティバル〉。これは1992年に小澤征爾を中心に創設された音楽祭〈サイトウ・キネン・フェスティバル松本〉が、2015年から名称を変更して続けられているもので、かつては小澤征爾が指揮するオペラ公演やオーケストラ・コンサートのチケットを確保するのが超至難であったほど、人気の音楽祭である。日本たばこ産業が出捐するアフィニス文化財団が行っている〈アフィニス夏の音楽祭〉も時期的に重なっている。これは日本のプロフェッショナル・オーケストラの能力向上のため、各楽団から若いメンバーたちを集めた研鑽を兼ねてのもので、飯田、山形/広島と開催都市を10年ごとに変えて、現在は長岡での開催となっている。

 音楽祭だけに特化している草津や松本とは異なり、〈アフィニス夏の音楽祭〉は、日頃からオーケストラ助成を行っている財団の催しの一環としての開催であるが、同じようにクラシック音楽界において、ことに日本の現代作曲家や現代音楽作品を助成する多面的な取り組みを日頃から行っているサントリー芸術財団(かつては音楽財団)が、その活動の一端として開催しているのが〈サントリーホール サマーフェスティバル〉である。もっとも、これは2017年までは財団主催の〈サントリー芸術財団サマーフェスティバル〉であったが、2018年からはホール主催のプログラムに組みこまれて、現在の名称になっている。

 主催や名称が変わってもこのフェスティバルの内容は一貫しており、日本および世界で創作されている最新の音楽作品や〈現代の古典〉とも言える作品、そしてそれらの演奏活動に取り組んでいる音楽家たちや若手作曲家たちの紹介等々、こうした音楽の普及に焦点を合わせたプログラムが毎年サントリーホールを〈暑く/熱く〉賑わわせている。

©X-Salabert

 フェスティバルはここ10年ほど3つの柱を持っており、そのひとつ〈ザ・プロデューサー・シリーズ〉は毎年異なったプロデューサーを決めてプログラムを展開する催し。これは〈~がひらく〉という名称の企画となっている。今年はパリのアンサンブル・アンテルコンタンポランやフランクフルトのアンサンブル・モデルンと並んで、現代作品に特化した秀逸なアンサンブルであるクラングフォルム(英語流に言えば〈サウンド・フォーラム〉)・ウィーンがプロデューサーとなり、日々更新されつつある彼らの膨大なレパートリーから4夜の演奏会が組まれている。そのなかには、今年生誕100年を迎えるギリシャの作曲家クセナキスの作品を特集した一夜がある(8月26日)。記念年とあって、今年ほどクセナキス作品が日本の主要都市で多くかかるという状況も過去に例を見ないが、クラングフォルムの用意した“ペルセファッサ”と“クラーネルグ”は、優秀な演奏者たちを必要とするのみならず、音響の空間配置も重要な要素となっているので、それらをクリアした今回の実演はまたとない機会となるだろう。