Photo by Takuo Sato

ジャズのフィーリングを活かしたヒップホップ的アルバム

 筆者がジェフ・パーカーというギタリストを初めて認識したのは、トータスのメンバーとしてだったと思う。しかし、その後、彼がブライアン・ブレイドのグループに参加したり、シカゴのジャズ・シーンを支える組織=AACMのメンバーだったことを知り、ジャズ畑の人なのか?という想いも脳裏をよぎった。

 しかし、2016年のソロ作『The New Breed』と今年発売された『Suite For Max Brown』はヒップホップからの影響を如実に感じさせる仕上がり。正確に言うなら、ジャズのフィーリングを活かしたヒップホップ・アルバムという趣だ。本人曰く「ヒップホップはずっと好きで、10年以上前からサンプリングやビート・メイキングを個人的にやっていた。それをようやく前作と新作で活かしたという感じ」だという。

 「バークリー音楽院でジャズを学んでいたけど、ジャズって両親の世代の音楽っていう印象がずっとあって。でも、ジャズの演奏がサンプリングされてヒップホップにとりこまれるようになって、ようやく自分の世代のものになったという気がしたんだ。僕とジャズの関係が変わったというかね」

JEFF PARKER Suite For Max Brown International Anthem/Nonesuch/HEADZ(2020)

 新作の制作プロセスは、ジェフらが様々な楽器をプレイし、ポスト・プロダクションの段階でそれを大胆に改変するというもの。言うなれば、ジェフはプロデューサーとしての顔とプレイヤーとしての顔、その両方を持ち合わせていることになる。どちらの比重が高いのだろう。

 「プロデューサーが8割かな。最近は、昔ほどギターで曲を書くっていうことをしていない。ギターよりも、ピアノとかシンセサイザーを使う。ギターを離れることで結果的に違う発想が生まれて自分でも驚かされるんだ。それで気が乗ればギターに移し替えることもある。考え方としてはギターを弾いて云々というより、他の楽器を含めてオーケストレーティング的な見方で作業をしている。その意味では、やっぱりプロデューサー的とは言えるかもね」

 ジェフのギターについては、彼が敬愛するジム・ホールがそうであったように、自然に空間に紛れ込み、アンサンブルの中に溶け込むようなプレイが印象的だ。

 「それは嬉しいね。サウンドクラフトの面では、J・ディラに刺激を受けた。最近は音楽の中に〈間〉(スペース)を設けることを意識している。たぶんそれはJ・ディラの音楽のいちばんパワフルな部分だったと思う。それは僕が彼の音楽を研究していく中でいちばん学んだことかな。彼がどうしてそれを可能にしていたのかは分からない。だけど、同じことを僕なりのやり方でやろうとしているんだと思う」