魅惑の〈声〉を持つ管楽器による三位一体のスペシャル・ユニット!

 弱冠16歳でニューヨーク録音のデビュー作を出した、トロンボーンのヴィルトゥオーソである中川英二郎。辣腕ビッグ・バンドを率い秀でたアレンジャー/リーダーであることも示している、トランペッターのエリック・ミヤシロ。T-SUQAREを皮切りにJフュージョンのトップ・ランナーであり続ける、アルト・サックス奏者の本田雅人。そんな異なる管楽器を持ち楽器とする名手たちが三位一体で重なるユニットを組んだのは、コロナ禍に入った2020年初秋のこと。オン・ラインのイヴェントのヘッドライナーにふさわしいセッションとして、中川がこれを提案した。 デビューが早かった中川は少し年下となるが、この三人の付き合いはすでに30年を超える。スタジオ・ワークでよく顔を合わせるだけでなく、各々のリーダー・グループに参加し合ったりもするなど、面々はかなり近しい間柄にある。とはいえ、管楽器3本だけの表現とはこれいかにと、ミヤシロと本田はその申し出を受けた際には少し戸惑ったという。ところが、実際にやってみたら豊穣な音楽的会話が望外に紡がれ、何より楽しいとなったという。現在は、その名もSUPER BRASS STARSという名前で各地で公演を行っている。

 そんな阿吽の呼吸を持つ三人の共通項は恵まれた音楽環境に育ち、子供の頃から楽器に親しむとともに、音楽大学できっちり学んでいること。だが、正統な音楽教育に縛られることのないしなやかな価値観のもと、自在に演奏できることの誉れをおおいに受け手に伝えてきていることも、彼らは重なる。

 砕けた言い方をすれば、思うままに重なり会話しようとするこの三人による表現は魅惑の〈声〉を持つ管楽器によるアカペラ表現とすることも可能か。それは伸縮自在な噛み合いのもと、荘厳でもあり、洒脱でもあり、軽妙でもあり。そして、今回はその単位にやはり百戦錬磨のギタリストの横田明紀男とピアニストの宮本貴奈という気心の知れたゲストが二人加わり、さらなる奥行きや色彩感を添える。

 素材となるのは、スウィング・ジャズの起伏に満ちた名曲“シング・シング・シング”やウェザー・リポートの代表曲“バードランド”などジャズの有名曲やメンバーのオリジナル曲など。それらがPAを介さない生きた〈場の音〉となって送り出され、高い音楽観や技量を山ほど抱えた演奏家の素敵、忌憚なく音を重ね合う歓びの発露へと実を結ぶ。そして、そんなパフォーマンス群は多大なエンターテインメント性を抱えるものでもあるはず。それもまた、この三人が重なるからこその妙味と言えるだろう。

 


LIVE INFORMATION
珠玉のリサイタル&室内楽
中川英二郎 × エリック・ミヤシロ × 本田雅人 Special Jazz Live

2022年11月19日(土)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:15:00/14:30
出演:中川英二郎(トロンボーン)/エリック・ミヤシロ(トランペット)/本田雅人(サクソフォン)/横田明紀男(ギター)/宮本貴奈(ピアノ)
プログラム:J. ザヴィヌル “バードランド”/エリック・ミヤシロ “Skydance”/L.\プリマ “シング・シング・シング” ほか