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ベルリン在住のギタリスト・山下愛陽がひらくギター曲の変遷

 クラシカルギターの歴史を知るために、こんなに魅力的なプログラムは滅多に無いと思った。ベルリン在住の山下愛陽(やましたかなひ)が4月にヤマハホール(東京・銀座)で開くリサイタルでは、ダウランドに始まり、レゴンディ、ブリテン、バッハ、マルタン、テデスコの綺羅星のような作品が並ぶ。

 「ギター以前にあった楽器、リュートなどにいま強い関心があって、それが後のギター音楽にどんな影響を与えたのかをたどってみたいと考えたプログラムです」とPC画面の向こうで山下が語り始める。

 「編曲作品も取り入れつつ、ダウランドの作品から影響を受けたブリテンの“ノクターナル”への道がひとつ。またバッハの“シャコンヌ”をギター用に編曲し演奏していたセゴヴィアと、作曲家カステルヌォーヴォ=テデスコの出会いによって生まれた“世紀を渡る変奏曲”への道がもうひとつ。前後半でそんな風なストーリーを考えてみました」

 ベルリン在住はすでに足掛け10年になるという。

 「ベルリン芸術大学でミュラー=ペリング氏に師事しつつ、プライヴェートでカルロ・ドメニコーニさんにも教えを受けていました。その後、より古い時代の音楽、楽器に関心が出て来たので、ニュルンベルク音楽大学でビョルン・コレル氏についています。彼はギターも教えていますが、リュートなどにも詳しいので、ベルリンから通ってでも学びたいと思って」

 小さい頃から夏休みに長期間、父(山下和仁)や家族と一緒にヨーロッパをツアーするなど、海外での時間も多かった。ベルリンでの生活も充実していると言う。

 「音楽だけでなく、様々なジャンルのアーティストと知り合うことが出来る点がまず魅力です。音楽でも素晴らしい演奏家に出会えるし、コンサートもオペラもたくさん経験できます。ドイツで学ぶ点のメリットは、まず自分の解釈、意見というものをしっかりと持つことの重要性を教えられる点。そこから自分がどう考えるか、あるいは他人が作品をどう考えているかについても思考を発展させることが出来るので、それが自分にとても良い影響を与えてくれると思っています」

 今回の帰国では、アサド兄弟なども出演する〈スーパーギタリスト夢の競演〉にも登場。参加アーティストの中で最も若いが、最も興味をそそられる存在だ。楽器はサルディニア島で製作を続けるリナルド・ヴァッカ作のギターを使うということで、その〈暖かみのある〉音色も楽しみとなる。

 


LIVE INFORMATION
山下愛陽 ギター・リサイタル

2025年4月28日(月)東京・銀座 ヤマハホール
開場/開演:18:30/19:00

■曲目
ジョン・ダウランド プレリュード(P98)「夢想」(P73)
ジュリオ・レゴンディ 夢の夜想曲、op. 19
ベンジャミン・ブリテン ノクターナル、op. 70
フランク・マルタン ギターのための「4つの小品」プレリュード アリア 嘆き ジーグのように
マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ 世紀を渡る変奏曲、op. 71
バッハ:シャコンヌ(山下愛陽編曲)

https://officeyamane.net/concerts/28-apr-2025-kanahi-yamashita-yamaha-hall/