
〈マジでオールウェイズはすごい〉と思わされたセカンド『Antisocialites』
──リードシンガーのモリー・ランキン(Molly Rankin)は音楽一家の出身で歌も上手いし、バンドの演奏もローファイ勢とは明らかに一線を画してました。そして、さらに大きくブレイクしたのが2017年のセカンド『Antisocialites』です。
畳野「ファーストよりも、こっちのほうが思い入れが深いかな」
福富「僕ら的には、これが決定打でした。ファーストは1曲目の“Adult Division”の疾走感のせいもあってギターポップ的な印象が強かったんですけど、このアルバムには〈マジでオールウェイズはすごいな〉と思わされました」
畳野「ファーストからの進化としてもわかりやすかったんです。〈いかにもアルバム曲〉みたいな埋め合わせた感じの曲がない。1曲1曲、全部がシングル曲っぽい」
福富「1曲目の“In Undertow”を聴いて、〈このめちゃいい曲がシングル曲なんやなあ〉と思って聴いてたら、いい曲がアルバム全部ずっと続いていったんです。あれでファンの心をちゃんとつかみきったし、だからこそ(今回の新作のリリースまで)5年待ってもいいと思えた。
セカンドの翌年に来日したときは、ツアーでも〈フジロック〉でもライブを観ました」
畳野「私は東京公演も観ました」
──ライブバンドとして観た彼らはどんな印象でした?
福富「めちゃ上手だし、スケールの大きさがすでにありました。僕が観た大阪の(梅田)シャングリラがハコとしてめちゃ小さく思えたし、もっと大きいところで見たいと思ったんです。〈フジロック〉の〈RED MARQUEE〉でようやくスケール感に見合った気がしました」

新しさと80s感が詰まった『Blue Rev』
──その来日からも4年。アルバムとしては5年ぶりのサードアルバムが新作『Blue Rev』です。プロデューサーはカナダ出身のショーン・エヴェレット(Shawn Everett)。
畳野「今回の取材のお話をいただく前から、先行で配信されていた2曲“Pharmacist”と“Easy On Your Own?”をすでにめちゃ聴いてました。
その2曲がアルバムのオープニングになってるというだけでもう〈めちゃ良さそう〉と期待してたんですけど、アルバム全編を聴いたら、私的にはむしろその後の曲からが、さらに良かったんです」
福富「僕もそう」
畳野「どっちかといえば、“Pharmacist”と“Easy On Your Own?”はセカンドまでの彼らの感じ。だから、ファンにはうれしい曲なんですけど、それ以降の曲からは彼らの新しさが感じられてびっくりした」
福富「僕も(笑)。最初の2曲と、その後の曲では印象が全然違ってるんですよ。“Pharmacist”を聴いたときはショーンさんっぽいサウンドとは感じなかったんだけど、全曲聴くと彼の個性が出てる。ショーンさんはアラバマ・シェイクスのエンジニアやミックスで名前を売った人というイメージですけど、そっちよりは同じく彼がプロデュースしてた、ジュリアン・カサブランカス&ザ・ヴォイズの『Tyranny』(2014年)と通じてる感じ。つまり、80s感が強いんです」
畳野「そうですね」
福富「僕、ヴォイズが大好きなんですよ(笑)。あのアルバムは、80年代のポストパンク、ニューウェーブ、ニューロマンティックとかをぐしゃっとごった煮にしたような感じだったけど、それと同じような匂いがすると思いました」