ロックでパンクなホムカミが戻ってきた? いや、新作『New Neighbors』は懐古ではない! バンドのルーツと現在進行形のモードを繋ぎつつ、4人はより良い未来へ向けて音を鳴らす!!

※このインタビューは2023年4月25日発行の「bounce vol.473」に掲載されている記事の拡大版です

ギター・ロックへの回帰

 「キャロル・キング的なフォーキーさを湛えたソウルをめざした」(福富優樹、ギター)という2021年の『Moving Days』から一転、このたびリリースされた新作『New Neighbors』において、Homecomingsはかつてないほどたくましくロックしている。バンドが活動10周年にあたる今年=2023年を見据えて向かった先は、本作からの最初のリード・シングル“アルペジオ”ですでに定まっていたという。

 「『Moving Days』では制作の最後に、あのアルバムでいちばんロックっぽい“Here”という曲が出来たんです。そこで次の方向性はこれやな、という感じがあって」(福富)。

 「〈ギター回帰〉みたいなムードは、言葉にせずともバンド全体にありました」(畳野彩加、ヴォーカル/ギター)。

 「新作が10周年を記念したアルバムになるということも頭にあり、ティーンエイジ・ファンクラブやスピッツの系譜に連なるギター・ポップ――そうしたバンドのルーツに忠実な楽曲を、日本語で作りたいと思ったんです」(福富)。

Homecomings 『New Neighbors』 IRORI/ポニーキャニオン(2023)

 続く“i care”(2020年4月)でも、ベン・フォールズを彷彿とさせるピアノ・ポップス然としたアンサンブルにさりげなくメロディック・パンク調のギターを重ねるという新機軸を披露。さらに2022年8月の“Shadow Boxer”は、グルーミーなコード感と重心低めのリズムを持ったホムカミ史上もっとも〈エモ〉なナンバーだ。

 「アメリカン・フットボールやスネイル・メイルがよく使う変則チューニングで作曲してみたんです。これは自分の理想していたものが初めて出来た感じ」(畳野)。

 「往年のエモを再現するのではなく、ナッシング・ノーウェアとかエモ・ラップ以降のエモも意識して、打ち込みのパートを入れました。新作には、いろいろな音楽の要素を組み込みつつ、それらがグラデーションになっている楽曲を揃えたかったんです」(福富)。

 ジャンルの混合による独自性は、くるりの岸田繁がストリングスと鍵盤のアレンジを手掛けた4つ目のリード曲“光の庭と魚の夢”(2023年1月)からも聴こえてくる。

 「この曲は、『WHALE LIVING』(2018年)と『Moving Days』という前2作で培ったものを、いまの自分たちなりに結実させようとしました。『WHALE LIVING』の頃のストリングスはもっと室内楽っぽいソフトな音だったと思うんですけど、いまはもっと強い音像にしたい気分なんです。現代のポップスとして響かせたかったんでしょうね。“光の庭と魚の夢”は、なるちゃん(石田成美、ドラムス)がデモに打ち込んだストリングスが良くて、その2020年代マナーのMIDIっぽい音の質感を残したうえで、キリンジ的な極上のポップスに仕上げたかった。くるりの近作の凄さもそこにあると感じていて、岸田さんの力を借りたんです」(福富)。

 それら4曲のリード・ソングを結び付けていたのは〈花束〉というモチーフ。歌詞を書いた福富のなかには、20世紀初頭のイギリスを舞台に女性参政権を求める運動を描いた映画「未来を花束にして」(2015年)があった。

 「〈名前もない気持ち 恋と呼ばないね〉と歌う“i care”はシスターフッド的な関係を歌いました。誰かと誰かが親しくしているとき、そこに恋愛感傷があるかないかが重要視される傾向がありますよね。特に男女だとそう見られがちだけど、別に何かに当てはめずに〈パートナー〉でいいじゃないですか。“Shadow Boxer”は、自分のなかにもある〈悪い男性性〉というか陰の部分と戦うことを描いた。これは、ホムカミではじめて社会への怒りを滲ませた楽曲だと思います。やっぱり女性3人とバンドをしていると、彼女たちが嫌な重いをすることをたびたび目にするし、男性社会のありように意識が向かうんですよね」(福富)。