2023年12月10日、Homecomingsが神奈川・横浜大さん橋ホールでスペシャルライブを開催した。デビュー10周年を記念した公演であり、バンドにとって過去最大規模となったこのライブでは、ストリングスを迎えた8人編成のセット、通常と同じ4人編成のバンドセットと2部構成で魅せた。ドラマーの石田成美の〈卒業〉を控えた重要な演奏の模様を、音楽/映画ライターの村尾泰郎が伝える。 *Mikiki編集部
ホムカミらしいお出迎え
冬の夕暮れ時。横浜港の大さん橋に向かう道には外国の街角を思わせるカフェやブティックが並んでいて、週末を楽しむ人が行き交っていた。その様子を見ていると、Homecomingsが曲で描いてきた街に迷い込んだようで、この風景を楽しむことからライブは始まっているような気がした。Homecomingsの10周年記念ライブ、〈Homecomings New Neighbors FOUR Won’t You Be My Neighbor? December.10 Yokohama Osanbashi Hall〉が開催されるのは海に突き出た大さん橋ホール。船をイメージしてデザインされていて、船のデッキみたいに床は木製だ。広々とした場内に入るとクリスマスツリーが飾ってあり、そこには『New Neighbors』のジャケットに登場した、メンバーをイメージしたキャラクターのマペットが寄り添っている。Homecomingsらしいお出迎えだ。
クラシックのコンサートのようなチェンバーセット
この日のライブは全席指定で2部構成。前半は弦楽四重奏を加えた〈Chamber set〉だ。ライブは“Here”でゆったりとスタート。観客は椅子に座って、クラシックのコンサートのように静かに演奏に耳を傾ける。ストリングスが奏でる旋律は波のようで、Homecomingsというバンドが船となってその波に揺られながら進んでいく。そんなイメージが浮かんだのは、ライブ会場が海の近くだったからかもしれない。
時としてストリングスはギターサウンドに溶け込んでシューゲイザー的な空間を生み出す。“PLAY YARD SYMPHONY”では、そんなシンフォニックな演奏で観客を魅了。エレクトロニックなビートを走らせた“Drowse”では、畳野彩加(ボーカル/ギター)はギターを置いてボーカルに専念。空いた空間をストリングスが埋めてメロディーをふくよかに彩る。
1曲ごとに違う照明の演出も素晴らしく、幻想的なムードを生み出していた。ストリングスサウンドにはぴったりの“光の庭と魚の夢”ではステンドグラスを思わせる映像がステージに映し出されて、まさに光の庭を彷徨うようだ。
別れが近づく4人が楽しんで演奏したバンドセット
〈Chamber set〉が終わると、休憩時間を挟んで後半の〈Band set〉へ。畳野が「ここからは立っても大丈夫ですよ」と声をかけると、観客は待ってましたとばかりに総立ち。“Cakes”“HURTS”と人気曲を続けて演奏する。バンドも前半とはギアを入れ替え、フォーマルな衣装から普段着に着替えたように伸びやかな演奏を聴かせる。畳野と福富優樹の息があったギターの絡み。身体の全身で弾く福富のギターからは、畳野と一緒に歌っているのが伝わってくる。しっかりとグルーヴをキープする福田穂那美のベース。今回、彼女のコーラスの歌声の美しさに改めて気づかされた。
そして、先日、〈卒業〉が発表された石田成美の優しさと力強さを併せ持ったドラムがバンドを導いていく。別れの日が近づくなかで、4人は実に楽しそうに演奏をしている。
“BUTTERSAND”の演奏中に機材トラブルで曲を止めるというアクシデントがあったものの、バンドは慌てずに対応。福富が冗談交じりに「こんなことがあっても僕は未来を信じたい。今から音楽の未来を見せます!」と観客に語りかけて演奏を再開し、場内を沸かせた。