シェフィールドの少年たちが憧れのアメリカ探訪を経て、ついには月へ! 北極猿の17年に及ぶ歩み

無料配信された楽曲が瞬く間に世界中のリスナーを夢中にし、最注目のバンドとなるなかで発表された初作。ジム・アビスによるアタック感の強い音の上で、矢継ぎ早に発せられる言葉とビートが、痛みと怒りに満ちたシェフィールド青春物語を綴る。なかでも地元への愛憎を歌った“A Certain Romance”は屈指の名曲だ。

前作から約1年で到着した2作目は、疾風迅雷の勢いで駆け抜ける1曲目の“Brianstorm”がロック・ファンをひれ伏させた。ジェイムズ・フォードをプロデューサーに迎え、新ベーシストにニック・オマリーが加わったことで、ファンクネスが増強。なぜかTikTokでバズり中の“505”を筆頭にモリコーネ趣味の現出もすでに今作から。

そしてアメリカへ。NYやモハーヴェ砂漠で録音された3作目では、ジョシュ・オムを召喚。ヘヴィーかつストーナーな“Dangerous Animals”などでその手腕が発揮されている。早くも青臭さや騒々しさが影を潜めたことに戸惑う声もあったが、この気怠い色香をマイルストーンに、彼らがその後の歩みを進めたのは歴史が示す通り。

前作のダークさとは打って変わって、眩いサンシャイン・ポップを鳴らした4作目。アレックスにとっては初のソロEP『Submarine』からのモードが継承された面もあったのだろう。“The Hellcat Spangled Shalalala”など、彼のメロディーメイカーとしての才を胸にキュンとくる演奏とともに堪能できる、良曲揃いの一枚。

ふたたびヘヴィーさへと向かった5作目は、『Humbug』における挑戦の価値も高めた重要作。Gファンクなど西海岸ラップのビートをバンド・サウンドでトレースしながらも、野性と官能性が充満したロックを響かせている。アレックスがジョン・レノンの憑依したかのような歌唱を見せる“No. 1 Party Anthem”は落涙必至。

バンド史上もっともブランクが空いたことには、アレックスの作曲スランプもあったそうだが、それゆえかキャリア最大の超越を果たしたと言うべき6作目。鍵盤やストリングスを中心に据えたラウンジ~サントラ的なサウンドが、月面にある(架空の)ホテルに暮らす人々を映す。この大いなる逃避を経て、新作で猿たちは地球に帰還。