“日々の手触り”ジャケット

初のワンマンライブ〈Bialystocks 第一回単独公演 於:大手町三井ホール〉を終え、メジャーファーストアルバムのリリースと2023年のツアーの開催を発表したBialystocks。先日、ついにアルバムタイトル『Quicksand』やジャケット、収録曲なども発表された。今回は、そのBialystocksの甫木元空が、今月リリースされたシングル“日々の手触り”について綴ったセルフライナーノーツをお届けする(なお、原稿は、アルバムタイトルやジャケットの決定前に書かれた)。 *Mikiki編集部

Bialystocks 『日々の手触り』 Bialystocks(2022)

 

日々の手触り、覚書

日々の手触り、覚書
東京にいる時の仮住まい、巣鴨のドミトリー。
塗るのを途中で諦めたのか、白いペンキが乱雑にブチまけられた天井をボーっと眺め、おじさんの寝言、奇声にも聞こえる声をお供に“日々の手触り”という曲がどの様にできたのか思い出してみる。

“日々の手触り”

Bialystocksを結成した2019年にはあったと思われるが、たった3年の歳月が自分の物差しでまったく測れない頭に呆れる。物忘れが激しくなった、只々それだけの事なのだが、忘却とはよくできた機能で感情の起伏にあわせて上手く消し去れる様になっているのかもしれない。

お好み焼き屋だったか、灰皿に消されたタバコ、食いカスの残った鉄板の前でポロポロと弾き語るムッシュかまやつの映像を当時見て楽曲制作にいたった……ような。ムッシュかまやつ、アコギ、弾き語り、記憶が頼りにならないのならネット検索。ザ・スパイダース解散記念シングルと題して発売されたムッシュかまやつ“どうにかなるさ”、その曲をニコニコ楽しそうにギターを弾き歌う姿。映像はすぐに見つかった。そこにはなにやら故人が映像として蘇る独特の寂しさは不思議となく、どうにかなるさ、完全に終わるわけではないと存在事態に言われているような、軽やかに歌う姿に惹かれた事を思い出す。

人によってどうしてもがんばれない時、どうしようもできない事が人生の中で必ず訪れる。抱えていられる悲しみの量は、人によって限りがあって、自分から溢れ出てしまった悲しみはどうにかなるさとほっておく。見つめられる時が来た時に、また飲み込み少しずつ時間をかけて減らしていくほかなさそうだ。

2017年から続いた余命宣告された母との高知での生活。時間が有限である事を告げられた人と生活をする中で焦りが募る日々。家族にむけて照れなんて考えている余裕もなかったあの頃。ムッシュかまやつがお好み焼き屋で弾き語りをしているあの軽やかな佇まいをどうにか生活や歌に落とし込めないものか模索していたのかもしれない。夢の様に終わりと背中合わせの暮らし、日々に手触りなどなく、触れたくて触れられない、もがいた跡がこの歌には残っている。

ここ数年旅立つ人を見送る事が多かったが、出会いも多くあり、やっと当時の事を残した歌や言葉を少しずつ飲み込み、先の事を見つめられる様になってきた気がする。
たくさんの人の力を借りながら11月に公開される映画「はだかのゆめ」、BIalystocksのアルバム、形は違えどここ数年引きずってきたものに何か一つ点を打つことができたような……。
母、父、恩師に直接聞かせる事はできなかったが、旅立った人にも聞こえるのかもしれない、そんな淡い期待を抱いてしまうのが音楽や映画の恐ろしい所だ。

えー、ただ。現在2022年10月18日……アルバムタイトル、デザイン、曲、なにもでそろっておりません……。果たして完成し、11月30日、無事発売できるのか乞うご期待……。 

 


RELEASE INFORMATION

Bialystocks 『日々の手触り』 Bialystocks(2022)

リリース日:10月5日
配信リンク:https://lnk.to/hibinotezawari

TRACKLIST
1. 日々の手触り

 

Bialystocks 『Quicksand』 IRORI/ポニーキャニオン(2022)

リリース日:2022年11月30日(水)
タワーレコード特典:音源ダウンロードコード付きポストカードTYPE-A

■初回限定盤(CD+Blu-ray)
品番:PCCA-06165
価格:4,950円(税込)

■通常盤(CD Only)
品番:PCCA-06166
価格:2,970円(税込)

TRACKLIST
CD
1. 朝靄
2. 灯台
3. 日々の手触り
4. あくびのカーブ
5. タダで太った人生
6. Upon You
7. Winter
8. 差し色(テレビ東京系ドラマ25「先生のおとりよせ」EDテーマ)
9. はだかのゆめ(映画「はだかのゆめ」主題歌)
10. 雨宿り

Blu-ray ※初回限定盤のみ付属
Bialystocks 第一回単独公演 於:大手町三井ホール 2022年10月2日
1. All Too Soon
2. 花束
3. またたき
4. Emptyman
5. 光のあと
6. フーテン
7. コーラ・バナナ・ミュージック
8. あいもかわらず
9. Winter
10. ごはん
11. Thank you
12. I Don’t Have a Pen
13. Over Now
14. 差し色
15. Nevermore
16. 日々の手触り
17. 夜よ

Bialystocksメジャー1stアルバム『Quicksand』特設サイト:https://quicksand.jp/

 

MOVIE INFORMATION
はだかのゆめ

■ストーリー
四国山脈に隔たれた高知県。いまだダムのない暴れ川の異名をもつ四万十川。太平洋に流れ出るその川の流れと共に、生きてるものが死んでいて、死んでるものが生きてるかのような土地で老いた祖父と余命をそこで暮らす決意をした母、それに寄り添う息子、ノロ。嘘が真で闊歩する現世を憂うノロマなノロは近づく母の死を受け入れられずに死者のように徘徊している。そのノロを見守るように寄り添うおんちゃん、彼もまたこの世のものではないのかもしれない。息子を思う母、母を思う息子がお互いの距離を、測り直していく、母と子の生死の話。

監督・脚本・編集:甫木元空
出演:青木柚/唯野未歩子/前野健太/甫木元尊英
プロデューサー:仙頭武則/飯塚香織
撮影:米倉伸
照明:平谷里紗
現場録音:川上拓也
音響:菊池信之
助監督:滝野弘仁 
音楽:Bialystocks
製作:ポニーキャニオン
配給:boid/VOICE OF GHOST
2022年/日本/カラー/DCP/アメリカンビスタ/5.1ch/59分
©PONY CANYON
https://hadakanoyume.com/

2022年11月25日(金)より東京・渋谷シネクイントほか全国順次公開

 

LIVE INFORMATION
Bialystocks Tour 2023

2023年1月21日(土)大阪・梅田 Shangri-La
2023年1月22日(日)愛知・名古屋 TOKUZO
2023年2月18日(土)東京・恵比寿 LIQUIDROOM

■チケット
オフィシャル1次先行受付中:https://w.pia.jp/t/bialystocks-oat/
受付期間:2022年10月2日(日)20:00〜2022年10月10日(月・祝)23:59

 


PROFILE: Bialystocks
2019年、ボーカル・甫木元空監督作品、青山真治プロデュースの映画「はるねこ」の生演奏上映をきっかけに結成。ソウルフルで伸びやかな歌声で歌われるフォーキーで温かみのあるメロディーと、ジャズをベースに持ちながら自由にジャンルを横断する楽器陣の組み合わせは、普遍的であると同時に先鋭的と評される。2020年、大型フェス(〈METROCK 2020〉)への出演が決定。2021年、ファーストアルバム『ビアリストックス』を発表。収録曲“I Don’t Have a Pen”はNTTドコモが展開する〈Quadratic Playground〉のウェブCMソングに選出されている。2022年、2作目の全国流通EPとなる『Tide Pool』を発表。同作は、話題になった先行シングル“光のあと”“All Too Soon”他全5曲を収録。同年4月には“差し色”がテレビ東京ドラマ25「先生のおとりよせ」のエンディングテーマに起用され、初のドラマ主題歌を担当した。同年10月に初のワンマンライブ〈第一回単独公演 於:大手町三井ホール〉を開催。