2022年7月9日、Bialystocksと優河 with 魔法バンドとの対バン公演〈Bialystocks Live 2022 “音楽交流紀 2”〉が開催された。前回同様、早々にソールドアウトとなった同公演は、2組の〈音楽交流〉にますます拍車がかかり、非常に充実したライブとなった。当日はBialystocksの甫木元空が監督する新作映画「はだかのゆめ」の公開、初のワンマンライブ〈第一回単独公演 於:大手町三井ホール〉の開催と、ビッグニュースの発表もあった〈音楽交流紀 2〉。その模様をライターの峯大貴がレポートした。 *Mikiki編集部
2022年をターニングポイントとしようという気概
グソクムズを共演に迎え、5月に第1回目が開催されたBialystocksの〈音楽交流紀〉。その時のライブレポートで筆者は〈Bialystocksというアートフォームが徐々に拡張する過程を記録していく、リアルな場所と時間になるのかもしれない〉とこのライブを評した。それはステージが素晴らしかったのはもちろん、EP『Tide Pool』とテレビ東京ドラマのテーマソングとなった“差し色”のリリースも含めて、2022年をバンドにとってのターニングポイントとしようという気概をひしひしと感じたからである。また前回のMCで甫木元空(ボーカル/ギター)から、早々に2回目の開催が発表され、今その動向をつぶさに追っておきたいバンドとして、この〈音楽交流紀 2〉はなんとしてもレポートしておきたかった。そんな前回痛感した意義を振り返りながら、今回も会場であるWWWを訪れた。
『言葉のない夜に』の次の世界を描いた優河 with 魔法バンド
早々にソールドアウトしたため満杯の場内では、小さめの音量でスフィアン・スティーヴンスの“Fourth Of July”や、ヴァン・モリソンの“Astral Weeks”が流れている。先行で登場したのは優河と、千葉広樹(ベース)、岡田拓郎(ギター)、谷口雄(キーボード)、神谷洵平(ドラムス)による魔法バンド。3月にサードアルバム『言葉のない夜に』を発表し、先月には東京キネマ倶楽部での発売記念ライブを終えたばかり。一区切りついてのパフォーマンスとなる。
1曲目は『言葉のない夜に』から“WATER”。印象的な優河の声のエフェクトがまず飛び込んでくるが、歌を支えるバンドの演奏はまるでステージを耕すようにじっくりとグルーヴを形成していく。その後、岡田の空間的なギターサウンドが曲間をつなぎがら、“さざ波よ”、“fifteen”でほんのりと温かく黄昏れた空気をまとい、続く“夜になる”、“June”では対照的に冷ややかなファンクで身体を揺らされる。新作の収録曲に限らず、『魔法』(2018年)以降の現メンバーと制作してきた歩みを駆け足で巡るようなセットリストだ。
さらに後半では新曲“people”も披露。神谷による重厚なビートと千葉のシンセベース、岡田の歪んだギターフレーズが存在感を示す、壮大なバラードであることに驚いた。それまで儚さを湛えながら、感情の機微を掬い上げるように歌っていた優河も、いつになく堂々と声を張り上げている。『言葉のない夜に』のさらに次の世界を描くためのスタートを切ったような一幕だった。
そしてラストはこのバンドの出発点と語る“魔法”で、この日最もヒートアップしたエモーショナルな演奏を聴かせつつ終演。心地よい余韻を残しながら、Bialystocksにつなげた。