2022年10月2日、Bialystocksの初のワンマンライブ〈Bialystocks 第一回単独公演 於:大手町三井ホール〉が開催された。これまでの自主企画と同様、すぐさまソールドアウトした同公演は、2人やファンにとって重要なライブだったと言っていい。毎回サプライズが用意されているBialystocksのライブだが、今回はメジャーデビューの発表と2023年のツアーの開催という大きな発表がされ、バンドの成長と次のフェーズへの移行を告げる記念碑的な一夜になった。7人編成のバンドでの刺激的で充実した演奏と当日の出来事を、ライターの峯大貴がレポートする。 *Mikiki編集部
Bialystocksの表現が鮮やかに燃え盛っている
今年の5月と7月に渋谷WWWで開催された対バン公演〈音楽交流紀〉を経て、満を持して初の単独公演。そして初のホールコンサート。甫木元空(ボーカル/ギター)の長編第2作となる映画監督作品「はだかのゆめ」も11月25日から公開と目の前だ。今年1月の初全国流通盤EP『Tide Pool』リリースから灯り始めたBialystocksの表現の火種が、今では鮮やかに燃え盛っている。本公演はチケット販売開始から早々に完売。大手町三井ホールの500以上ある席が埋め尽くされている光景を見て、ひしひしと勢いを感じていた。
経験をフィードバックさせたバンドの調和と成長
“ごはん”のストリングスバージョンがSEとして流れる中、メンバーがステージに登場する。甫木元と菊池剛(ピアノ/キーボード)の2人に加えて、西田修大(ギター)、越智俊介(ベース)、小山田和正(ドラムス)、佐々木詩織(コーラス)、オオノリュータロー(コーラス)を迎えた7人編成。佐々木以外は〈音楽交流紀 2〉と同じ布陣だ。
前回は初参加だった西田修大によるギタープレイの存在感によって、演奏のダイナミクスと性急さが際立っていたが、この日はまるで異なる印象。むしろ西田のギターが全体のサウンドのバランスを取る役割を担っていたことに驚いた。1曲目の“All Too Soon”で菊池のピアノソロの後ろで鳴るトレモロのエフェクトや、“Emptyman”、“あいもかわらず”など一部の楽曲ではアコースティックギターを手にする場面もあり、曲に応じてギターの立ち位置を変化させている。それによって相対的に“Winter”や“灯台”での鋭利なギターフレーズにはもはやカタルシスを感じるほどの高揚を感じられるようになった。
また左から越智、西田、小山田という並びの立ち位置で、西田が度々隣の2人と目くばせし合っていたことも印象的である。西田だけでなく越智もシンセベースやスラップなど曲によって巧みにアプローチを使い分けていたり、菊池がアコギやガットギターを弾く場面もあったり、過去2回の〈音楽交流紀〉の経験をフィードバックさせた調和の取れた演奏で、バンド全体の成長を感じられた。
そこに加えて大井町三井ホールの音の鳴りも、この日のアンサンブルとマッチしており、特に甫木元と菊池、そして2人のコーラスとのハーモニーがより広がりを持って響いていたことも特筆すべき点である。
力強く冴えわたる甫木元空のボーカル
また甫木元の声の調子もこの日に合わせてきたとばかりに冴えわたっていたことも触れておきたい。曲と曲の間はなるべく短く、矢継ぎ早に演奏を進めていく構成だったが、曲が進むごとにギアは上がっていくばかり。繊細な声色の中にしなやかな芯を携えたような力強さが感じられた。
特に9月に発表したばかりの新曲“灯台”の後半に登場するBialystocks史上最もハイトーンなファルセット。駆け上がる音程に対して軽やかなブレスを挟みながら、身体を絞るように歌い上げる甫木元の姿はこの日のハイライトと言えるだろう。
また“I Don’t Have a Pen”では西田のギターが唸りを上げると共に、甫木元も珍しくシャウトしながら飛び跳ねるなど、フリーダムに演奏に身を任せていたのも名場面だ。