COLUMN

小柳カヲル 「クラウトロック大全」

小柳カヲル クラウトロック大全 ele-king books(2014)

クラウトロック」とは、本書にとりあげられている60年代末から70年代にかけてドイツ(当時は西ドイツ)で生まれたロックであり、それは70年代英国のジャーナリズムによって命名されたもの。しかし、ロックというには米英の直接的な影響圏から離れているがゆえに、どこか本流を逸脱したロック、という趣を持っている。それは、ヨーロッパの芸術音楽の伝統を持ち、電子音楽においても先駆けた作品が作られた西ドイツという場所の状況および民族的アイデンティティを反映した、文化的、社会的背景によって育まれた、ドイツ独自の音楽である。

「クラウトロック」は、70年代末のポスト・パンクの時代、そして90年の東西ドイツの統一以降も、エレクトロニック・ボディ・ミュージックなど、英国ほかの音楽へ逆に影響を与えながらも、「クラウトロック」それ自体としてのスタイルの独自性は解消されてしまった。それゆえ、所謂主流とは異なるが、コアなファンが多いのも特徴だ。

【参考動画】クラフトワーク“The Robots”2013年版MV

 

 本書は、「大全(Encyclopedia)」の名のとおり、当時の西ドイツ産ロックを集大成したディスクガイド。ガレージサイケデリックフリージャズ、現代音楽、電子音楽などを滋養として、同時代的にはプログレッシヴ・ロックや、テクノおよびエレクトロ・ポップとして享受された「クラウトロック」と、80年代以降は、パンクを経由したニューウェーヴの時代「ノイエ・ドイッチェ・ヴェレ」の二部から構成され、それぞれがケルンやデュッセルドルフやベルリンといった、主要都市ごとに編集されているのが特徴。都市をバックグラウンドにした、それぞれの音楽の出自をとらえることができる。ハイノや東ドイツのコンピレーションなどが白眉。

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