成功を極めた『Heavy Is The Head』(2019年)から3年、現行UKラップの王者が英デフ・ジャムに移籍しての3作目は、売れっ子のP2JとPRGRSHNを軸にした制作陣入れ替え以上のスタイル変化に挑んだ意欲作だ。柔和なアフロビーツ“Hide & Seek”や朴訥と歌う“Firebabe”という先行曲から予想できたように、従来型の重たいラップ曲はアマレイらを迎えた“This Is What I Mean”ぐらい。ピアノや弦、ジェイコブ・コリアーやサンファ(独唱のインタールードまである)らの荘厳なコーラスを随所に配した静謐な作風が全編を通底し、シーラ・モーリス・グレイやインディア・アリーら意外な名前の彩色も光る。成熟というよりは音楽的な進化への野心が頼もしい好盤で、3連続で堂々の全英No.1を獲得済み。