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エド・シーラン『No.6 Collaborations Project』 現代最高のヒットメイカーが豪華ゲストを迎えた野心的なコラボ作

エド・シーラン『No.6 Collaborations Project』 現代最高のヒットメイカーが豪華ゲストを迎えた野心的なコラボ作

これは気ままな遊びなのか、次なる展開への道標なのか……当代きってのヒットメイカーが気の向くままに挑んだ、豪華アーティストたちとの野心的なコラボレーション・アルバム!

 「僕がメジャー契約の前にEPをたくさん作っていて、当時大ファンだったUKラッパーたちとコラボした、8曲収録のEP『No.5 Collaborations Project』(2011年)があって、それ以降、自分の作品用のコラボはほとんどしてこなかった。他のアーティストの曲に僕がフィーチャーされることはたくさんあったけど、自分の作品は全部ソロの曲だった。そうやって普通に過ごしていたけど、心の片隅にはいつも〈この人とコラボできたらな、あの人と一緒に仕事してみたいな〉という思いがあったんだ。そして、ビヨンセとアンドレア・ボチェッリとシングルの“Perfect”でコラボした頃から、またラップトップを取り出してこの作品を作りはじめることになったんだよ」。

 そうでなくても『+』『×』とそこから生まれた数多のヒットによって世界の認めるトップ・アーティストの座に君臨していたエド・シーランではあったが、“Shape Of You”や“Perfect”をはじめとする問答無用のヒット・チューンを量産した2017年のサード・アルバム『÷』への現象的な支持は、収まることなく世界に波及し続けている。現在も続くツアーで世界を巡りながら(今年の4月には東京/大阪でドーム公演を開催し、両日で計9万人を動員)制作を進めてきたのが、今回のニュー・アルバム『No.6 Collaborations Project』だ。

ED SHEERAN No.6 Collaborations Project Asylum/Atlantic/ワーナー(2019)

 「いちばんやりたくなかったのが、レーベルに〈この人とコラボしなさい〉って背中を押されることだったんだ。だから僕がCDを持っていたり、運転中に車の中で曲を流すようなアーティストなら一緒にやる、というルールを決めたんだ。もちろん世の中には本当に素晴らしくてビッグなアーティストたちがたくさんいるけど、だからってそんな理由で彼らとコラボするのは、理解できないことだからね」。

 そうした基準で自由に作られたのが、ジャスティン・ビーバーを迎えたダンスホールの先行ヒット“I Don't Care”をはじめ、カリードとのマイルドな“Beautiful People”、「とても模範になる人」だというチャンス・ザ・ラッパーとPnBロックを交えた“Cross Me”、マーク・ロンソン新作での活躍も目覚ましいイェバとの“Best Part Of Me”などのトラックだ。なかでもブルーノ・マーズ&クリス・ステイプルトンと伝統的なハード・ロックに挑んだ“Blow”は、MVも含めて遊び心に溢れた出来映えだった。

 「もともと今回のプロジェクトは〈ブルーノ・マーズとジャスティン・ビーバーと僕で“Lady Marmalade”(全米1位を記録したラベルの74年曲)のリメイクをするんだ! 楽しそうだろ?〉みたいな一つの馬鹿げたアイデアから始まったんだ。結局ブルーノと2人で一緒に曲を作ることになったから、ブルーノとコラボ曲を作って、それからビーバーとも作って。それらの作品たちが集まって一つのプロジェクトになったんだ」。

 先述した以外にも、カミラ・カベロやカーディB、Jハスとヤング・サグ、H.E.R.、エラ・メイ、トラヴィス・スコットら英米のアーバンな人気者が並ぶ布陣の豪華さは、ストームジーとのグライム・チューン“Take Me Back To London”で出自をアピールすることで、却って往時の『No.5 Collaborations Project』からのスケールアップ感を窺わせる部分か。“River”(2017年)で組んだお返しにエミネム(と50セントまで!)を担ぎ出したシェイディ風の“Remember The Name”がある一方、ラテン・トラップ系のパウロ・ロンドラと現行UKシーンのトップに躍り出たデイヴを交えた“Nothing On You”などは旬の雰囲気を感じさせるもので、ミックステープ的な今作の気安いノリにもマッチしている。本人も「このアルバムは、世に出したら惜しげもなく次の作品に取り組みたいタイプの作品だ。この作品が僕のキャリアにおける次の段階とは見てほしくない。自分が単に作りたくて作った作品なんだ」と念を押すように、いままでのオリジナル・アルバム3枚とはあくまでも別軸にある楽しみの産物なのだろう。

 なお、コラボそのものをテーマにした作品だけに個々のゲストが各曲における大きな意味を占めるわけだが、別の角度から見た作品トータルのキーマンは、大半の楽曲を共同プロデュースしたフレッド(・ギブソン)だろうか。すでにショーン・メンデス“Fallin' All In You”やBTSの“Make It Right”といったライティング仕事でもエドと絡んでいる彼は、クリーン・バンディット“Solo”やジョージ・エズラ“Shotgun”といった全英No.1ソングやエリー・ゴールディングの最新曲“Sixteen”などを手掛けるUKの旬なヒット請負人。もちろんこれまでのエド作品で主翼を担ってきたベニー・ブランコやスティーヴ・マックの参加もあるし、マックス・マーティン&シェルバックの活躍も見逃せないものの、全体に一貫したムードを及ぼしているのはフレッドの手捌きだろう。エド自身の言う〈次の段階〉への道筋はこのあたりに見えている気がしなくもないのだが。

エド・シーランの作品を紹介。

 

『No.6 Collaborations Project』に参加したアーティストの作品を一部紹介。

 

40周年 プレイリスト
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