タイム誌の表紙に選ばれたりと、UK音楽シーンに留まらない活躍が目立つラッパーの最新アルバム。太いキックとヘヴィーなベースを軸としたサウンドは、グライムの要素が色濃い。そこにゴスペル、ソウル、R&Bのスパイスを振りかけることで、多面的かつ高品質なポップ・アルバムに仕上げている。メロウなトラップの“Rachael's Little Brother”や、H.E.R.をフィーチャーした“One Second”など、有り体に言えばヒットを狙える曲が多い。もちろんデビュー当初のアンダーグラウンド臭は微塵もなく、スーパースターに登り詰めた風格だけが漂う。そのことに寂しさを感じる者もいるだろう。しかし筆者は、高みを求め続けるストームジーの姿に惹かれる。