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オールスター・ジャズ・アンサンブルによるマイルス・プロジェクトの最新録音、いよいよリリース!

 タイトなドラムスにスラップ・ベース、緊張感漂うキーボードの和音に乗せて、マイルスのミュート・トランペットが“ジャン・ピエール”のようなラインを奏でる。1曲目の“ヘイル・トゥ・ザ・リアル・チーフ”が始まった途端に、部屋の空気はマイルス色に染められた。マイルス・エレクトリック・バンド改めM.E.B.の新作は、マーカス・ミラーやジョン・スコフィールドなど、80年代のマイルス・バンドを支えたスターたちをフィーチュアしたこの曲で始まる。

M.E.B. 『That You Not Dare To Forget』 Columbia/Legacy/ソニー(2023)

 マイルスの甥で、80年代にマイルスのバンドにいたヴィンス・ウィルバーンJr.と、名盤『ビッチェズ・ブリュー』に参加していたレニー・ホワイト。M.E.B.はこの二人のドラマーが中心となって、マイルスゆかりのミュージシャンたちが集結したプロジェクトだ。なんと言っても “ヘイル・トゥ・ザ・リアル・チーフ”と“ビッチェズ・アー・バック”にマイルスが遺したトランペット・プレイが使われていて、没後30年以上を経ての“マイルスの新曲”が聴けることが最大の話題だろう。“ビッチェズ・アー・バック”ではBluとナズのラップがフィーチュアされて、もしマイルスが21世紀まで元気でいたら、こうしたサウンドに挑戦したのでは、と思ってしまった。この曲と“メロー・キッセズ”では、ロン・カーターの重厚なベースが聴けるのもうれしい。

 マイルスの音が使われていない3曲も、ジョー・ロマーノ、ウォレス・ルーニー、ジェレミー・ペルトが1曲ずつマイルス風のトランペットを吹いている。ちなみに、マイルスに私淑したルーニー(2020年3月にCOVID-19のため死去)の最後の録音はこの“メロー・キッセズ”だったという。また、『TUTU』に参加していたキーボード奏者バーナード・ライト(2022年5月に交通事故で死去)のラスト・レコーディングもこの時だった。共に50代で亡くなった二人を偲びつつ、〈21世紀のマイルス・ミュージック〉を楽しもう。