私たちの日常の風景をすっかり変えてしまった、コロナ禍。それはまた、私たちの音楽の聴き方にも少なからず影響を及ぼしたと思います。以前好きだった音楽を受け付けなくなったり、あるいはそれまでスルーしていたような音楽に突如として心を奪われたり……。

そこでMikikiでは、ミュージシャンやレーベル関係者、レコード・ショップ関係者、ライブハウス関係者など音楽に関わって仕事をする人々に〈コロナ禍以降、愛聴している1曲〉を訊ねる新連載をスタート。その回答は一人ひとりのいまの心情を映し出すと同時に、災いに見舞われた人々に対して音楽がどのような意味を持つのか、そのヒントにもなるのではないでしょうか。 *Mikiki編集部

【アーティストと音楽関係者が選ぶ〈コロナ時代の1曲〉】記事一覧はこちら


 

西山 瞳

2005年横濱ジャズプロムナード・ジャズコンペティションでグランプリを受賞し、2006年スウェーデン録音CD『キュービウム』でデビュー。2010年インターナショナル・ソングライティング・コンペティション(アメリカ)で、ジャズ部門3位を受賞。 2015年よりヘヴィ・メタルの名曲をカヴァーするプロジェクトNHORHMを率い、アルバム『ニュー・ヘリテージ・オブ・リアル・ヘヴィ・メタル』シリーズはジャンルを超えたベストセラーとなる。 デビュー以降21作のアルバムをリリースし、ヨーロッパジャズを背景とした独自の音楽性により、幅広い音楽ファンから支持されている。Mikikiにて〈鋼鉄のジャズ女〉連載中。

 

コロナ禍以降、特に愛聴している1曲は何ですか?

Miles Davis Quintet “It Never Entered My Mind”
(60年作『Workin’ With The Miles Davis Quintet』収録)

コロナ禍の前から、寝入りの時によく聴いているテイクです。複雑で高難度なことをしているスリリングなジャズも大好きですが、コロナで生活が変わってからは、穏やかな気持ちになれるシンプルだけど根源的な美しさを持った名盤をよく聴くようになりました。

音楽活動が思うようにできず、小さなジャズクラブでも人数制限、お酒も出せず、マスクを装着して表情も隠れたまま演奏し、終演後のミュージシャン同士やリスナーとの交流もろくにできないという異常事態。ジャズの根幹である他者とのコミュニケーションが、あらゆる局面で困難になっています。人と人とで音楽をする基本の美しさとは何だろうかと、偉大な先人の残した美しく品格のある演奏を今聴きたいと思うのは、自然なことなのかもしれません。

このIt Never Entered My Mindは、私の憧れる美しさが詰まっていて、繰り返し何度も何度も聴いています。

★〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉記事一覧はこちら

 


RELEASE INFORMATION

西山瞳トリオ 『コーリング』 MEANTONE RECORDS(2021)

■作品紹介
2006年のデビュー・アルバムより、ピアノ・トリオ作品を中心に発表してきた西山瞳。今作は2014年『Shift』以来、久々のオリジナル曲中心のスタジオ・アルバムとなる。 2011年作『Music In You』、2013年作『Sympathy』と同じ、佐藤ハチ恭彦(ベース)、池長一美(ドラムス)によるトリオでの収録。
タイトル曲“Calling”は、デビュー前の活動初期からホームグラウンドとして共に歩み、コロナ禍の中でひっそりと閉店した神戸のライブスペースCREOLEに捧げられた曲。 音楽活動のあり方が変化していく中、透徹した美意識に基づいたコンポジションで、時代と向き合う。 

■概要
リリース日:2021年9月15日(水)
フォーマット:CD(​ゲートフォールド紙ジャケット仕様)
レーベル:MEANTONE RECORDS
品番:MT10
価格:2,970円(税込)

TRACKLIST
1 Indication
2 Calling
3 Reminiscence
4 Lingering In The Flow
5 Etude
6 Loudvik
7 Drowsy Spring
8 Folds of Paints
(All Compositions By Hitomi Nishiyama)

 

LIVE INFORMATION

緊急事態宣言などの影響で不確定なので、オフィシャルサイトにてご確認下さい。
http://hitominishiyama.net/