歌の翼に導かれた佐藤&久末によるメンデルスゾーン
2019年に日本人として初めて難関であるミュンヘン国際音楽コンクールのチェロ部門で優勝した佐藤晴真。優勝後も順調に活動を続け、アルバムのリリースも続いている。その佐藤の第3弾となる最新作はドイツ・ロマン派を代表する作曲家メンデルスゾーンの2曲のチェロ・ソナタを中心とした選曲で、清々しさの中に天才作曲家の秘められた情熱を感じさせる音楽を見事に捉えている。
「メンデルスゾーンのチェロ作品たちに出会ったのは、僕の日本での師である山﨑伸子先生のリサイタルでのことでした。ピアノは津田裕也さんで、その時にメンデルスゾーンの音楽の素晴らしさを発見し、弾いてみたいと思ったのがきっかけです」
しかしメンデルスゾーンのチェロ・ソナタは難曲としても知られている。ピアノ・パートが難しく、特に“第1番”のソナタは意外に実際の演奏に出会うことが少ない。
「そんな時、ロームミュージックファンデーションの主催する室内楽の演奏会で、たまたまピアニストの久末航(わたる)君とメンデルスゾーンの室内楽を共演する機会があり、彼とならチェロ・ソナタも演奏が出来るのではと思ったところから、このプロジェクトが進み始めました」
実は佐藤も久末もベルリン芸術大学で学んでいる仲間だった。ただ、ベルリンで実際に話したりする機会はあまり無かった。
「久末君にピアノを共演してもらうことで、メンデルスゾーンのチェロ・ソナタの中にある、飛び跳ねるようなピアノの音と豊かなチェロのメロディがうまく絡み合い、作品の魅力をうまく表現できたと思います」
と、佐藤。今回の新作では、他にメンデルスゾーンの代表作として知られる歌曲“歌の翼に”のチェロ編曲版、そしてピアノの代表作でもある“無言歌”作品109、そしてこれもあまり演奏されることのないチェロとピアノのための“協奏的変奏曲”が収録された。
「チェロ・ ソナタ第1番は、チェロ奏者でもあった彼の弟のために書かれた作品です。チェロという楽器が身近であっただけに、楽器としての個性をよく理解していて、使っている音域も幅広く、同時に、技巧的な面の魅力だけでなく、煌めくような音符が潜んでいたり、流れるような豊かなメロディがあったり、とたくさんの魅力が詰まっている作品です。メンデルスゾーンという作曲家を知る上でも、ぜひ一度は聴いて頂きたい名曲です」
若きふたりによるロマン派の名作をぜひ手元に置いて頂きたい。
LIVE INFORMATION
ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団
2023年5月9日(火)東京・初台 東京オペラシティコンサートホール
開場/開演:18:20/19:00
曲目:ウェーバー:歌劇「魔弾の射手」序曲 他
出演:クリストフ・エッシェンバッハ(指揮)/佐藤晴真(チェロ)/ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(管弦楽)
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