普段まったくゲームをやらない方でも「ドラゴンクエスト」という名前くらいはご存じでないだろうか。文字通り「KING OF RPG」。壮大なストーリー、斬新かつ魅力的なシステムを擁し、絶大なる人気を博してきたシリーズも第10弾(今回は追加パッケージ・ソフト用のサウンドトラック)が発売されるに至った。
第1弾の発売(1986年)から既に28年、その人気を支えてきた2大要素こそ、鳥山明氏の描く個性的な「キャラクター」と、「音楽」を担当してきた〈すぎやまこういち〉氏である事は間違いない。既に《亜麻色の髪の乙女》や《恋のフーガ》などの大ヒット曲を世に送り出していた一流作曲家すぎやまこういちが当時名もないソフト会社のゲーム音楽を手掛けたのは、偏にすぎやま氏が無類のゲーム好きであったためで、その出会いたるや、将棋ソフトの駒の組み方に疑問を感じてアンケートはがきを書いたのがきっかけというから、世の中はわからない。それから30年近くが経ったが、いまだドラクエの音楽はすぎやまこういち、ただ一人に託されているのである。
今回のサントラも例に漏れず、すぎやま氏の熟練の技が生きた情景豊か、かつ耳になじみやすいメロディで、ゲームを目にしなくともシーンが浮かぶような見事な音を紡いでいる。プラスして今回のサントラでは、過去の作品から名曲を集めてオーケストラにて演奏しているため、BEST的な内容ともなっているため、過去の作品に触れたことのある方にもお勧めできる内容だ。
併せて発売されるのが南澤大介氏のアレンジによる「ギターによるドラゴンクエスト」という、ありそうでなかった内容のCD。歴代の作品から人気曲を選びアレンジをしているのだが、このアレンジが実に秀逸で、Iのフィールド曲 《荒野を行く》やIIIの 《おおぞらをとぶ》、VIIの《トゥーラの舞》など、本編でも使えるのではと思えてしまうほどだ。そしてファン心をくすぐるレベル・アップやセーブ音などの効果音を盛り込んでいるのも点数が高い。中々に聴き応えのある2枚ではないかと。