拡大を続け、世界中で愛されるゲーム「ポケモン」

2000年に発売され、長らく絶版となっていた幻の名著「ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団」が復刊、2025年5月1日に発売されました。

とみさわ昭仁 『ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団』 太田出版(2025)

いまや世界中で愛される「ポケットモンスター」シリーズ。その原点であるゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター 赤・緑」(1996年2月27日発売)は、ポケットモンスター(略してポケモン)と呼ばれる生き物が息づく世界を舞台に、カントー地方のマサラタウンに暮らす主人公が、ポケモン博士から1匹のポケモンをもらい、未知なる冒険へ歩み出していくRPG(ロールプレイングゲーム)。

その物語は、さまざまな地方を経て、2022年発売のNintendo Switch用ソフト「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」にてオープンワールドを取り入れた壮大な自然が広がるパルデア地方に到達。現在までに発見されたポケモンの数は1,000匹を超え、遊びの幅も大きく広がりました。さらに、2025年秋には〈「ポケットモンスター」シリーズの新たな挑戦作〉と銘打たれた最新作「Pokémon LEGENDS Z-A」がNintendo Switch用ソフトとして発売されます。

 

伝説のゲームを生んだ人々の秘話が明かされた名著

本書は、家庭用ゲームソフトの企画/制作を手掛けるクリエイティブ集団〈ゲームフリーク〉が、いかにして「ポケットモンスター」を生み出すに至ったのか、その制作現場の舞台裏やそれに関わる人々がどのような思いをもって作品と向き合ってきたのかについて、かつてゲームフリークに所属していたフリーライターのとみさわ昭仁氏が書き記した作品。

虫取り少年だったゲームクリエイター・田尻智氏が何に触れ、何を吸収し、「ポケットモンスター」を発案したのか。〈ゲームフリーク〉が数々の窮地や壁を仲間たちと共に乗り越えながら、ゲーム業界では異例と言える開発期間を経て、新たな遊びのシステムを取り入れた「ポケットモンスター」を発売するまでが筆者の目を通して綴られています。

また、ポケモン交換の画面表示に取り入れられた別れの切なさを感じる演出や、交換したポケモンの名前がゲットした親にしか変更ができない理由など、ゲームをプレイしたことがある人なら〈なるほど〉と思うであろうゲーム開発秘話は読みごたえがあるし、キャラクターデザインを担当した3人のキーパーソンやゲームフリークの社内で行なわれたポケモン投票の意外な結果、「ポケットモンスター」と並行して制作されたゲームの紹介など、〈中の人〉ならではの話題も盛り込まれていて、楽しく読める一冊となっています。

さらに、巻末では〈特別企画〉として今回の復刊にあたって田尻智氏はもちろん、杉森健氏、石原恒和氏、増田順一氏といった本書に度々登場する人物たちが、発売から29年を迎えた「ポケモン」について語っています。

「ポケットモンスター」の誕生のひみつに触れられる「ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団」。ポケモンを愛する多くの人に届いてほしい書籍です。

 


BOOK INFORMATION

とみさわ昭仁 『ゲームフリーク 遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団』 太田出版(2025)

発売日:2025年5月1日(木)
ISBN:978-4-7783-4018-6
仕様:四六判/352ページ
価格:2,420円(税込)

目次
プロローグ
第1部 ポケットモンスター
 第1章 誕生前夜/第2章 ポケモン制作への助走/
 第3章 インターミッション/第4章 ポケモンの完成に向けて
第2部 ゲームフリーク
 第1章 少年さとし/第2章 ゲームライター時代/
 第3章 クインティ制作秘話/第4章 プロとして模索の時代
エピローグ
あとがき
復刊にあたって 田尻智/杉森健/石原恒和/増田順一
復刊にあたっての「あとがき」

 


PROFILE: とみさわ昭仁
1961年8月3日生まれ。東京都出身。ミニコミ「よい子の歌謡曲」スタッフを経て、フリーライターに。1991年7月にゲームフリーク入社。出版部主任を務めるかたわらゲームデザインを学ぶ。1994年8月、ゲームフリークを退社し独立。現在に至る。代表作に「メタルマックス」(ファミコン/データイースト)、「クリックメディック」(プレイステーション/SME)、著書に「無限の本棚〈増殖版〉」(ちくま文庫)、「ゲーム ドット絵の匠 ピクセルアートのプロフェッショナルたち」(ホーム社)、「レコード越しの戦後史歌謡曲でたどる戦後日本の精神史」(Pヴァイン)、「こちら葛飾区亀有公園前派出所こちゲー ~こち亀とゲーム~ 上・下巻」(ホーム社)、「勇者と戦車とモンスター 1978~2018☆ぼくのゲーム40年史」(駒草出版)など。