Photo:Emily Dennison

新ドラマー、ジョン・スコットを迎えて新たなステージへ!

 鮮やかな飛躍が感じられる、紛うかたなき野心作。マンチェスター出身の3人組、ゴーゴー・ペンギンの新作『Everything Is Going To Be Ok』には、そんな形容がしっくりくる。元々、テクノやエレクトロニカを踏まえつつ、アコースティックなジャズを演奏するのが彼らの流儀だったが、前作のEP『Between Two Waves』では、シンセサイザーを大々的に導入し、ドラムに大胆なダブ処理を施し、彼らなりのグルーヴを追求されていた。

GOGO PENGUIN 『Everything Is Going To Be OK』 XXIM/ソニー(2023)

 EPの延長線上にある新作では、ベーシストのニック・ブラッカがベースを弾かずにシンセサイザーを操ったり、エレクトロニクスやエフェクトを惜しげもなく投入したり、狭義のジャズに収まらない意欲的なスタンスが明瞭になっている。ドラムのロブ・ターナーが脱退し、新たにジョン・スコットが加入したことも大きかったのだろう。

 ロマンティックでリリカルな旋律を奏でるキーボード、不気味にうごめくような重厚な響きを有するベース、タイトでシュアーなプレイを披露するドラム。特に、ドラムのジョン・スコットの生々しい音色が空間を巧みに支配している。ちなみに、ジョンは、エチオ・ジャズの第一人者、ムラトゥ・アスタトゥケのツアードラマーにも参加した才人。彼が叩くことで、平面的な音像が一気に立体的に見えてくる場面が多々あり、新作でのプレイは確実に存在感を増している。

 躍動感溢れるリズムと、その中で埋もれない印象的な旋律。そして端々から滲むロック的なダイナミズム。この三者が絶妙なバランスの上で成り立っているのが、今の彼らのアンサンブルの基盤である。また、彼らの曲をコーネリアスやスクエアプッシャーがリミックスした『GGP/RMX』を通過したことも、プラスに作用したのではないか。ジャズ、ドラムンベース、ブレイクビーツ、エレクトロニカ、ベースミュージックなど様々な要因が複合的に重なりあう新作は、間違いなく、彼らにとってのターニングポイントと言えるアルバムだ。

 


LIVE INFORMATION
FUJI ROCK FESTIVAL ’23出演決定!
開催日:2023年7月28日(金)、29日(土)、30(日)
※GoGo Penguinは29日(土)に出演
https://www.fujirockfestival.com/