6年ぶりのオリジナル作は、前作『Mellow Waves』に続く歌もの中心の作品と位置付けられるだろう。だが、今回は“変わる消える”以外のすべての詞を自身が手掛け、その自身の言葉こそに重きを置いている点において、前作を含む過去作とは異なる地平へと進んでいる。選び取られたシンプルで乾いた言葉は、彼流のミニマルな音像と不可分に結びつき、現実とサイケデリック、痛みやメランコリー、エモーションを立体的に描く。胸が熱くなる瞬間は多いが、禁欲的な展開から〈蜃気楼〉の一言でハーモニーがぐにゃりと歪む“蜃気楼”に痺れた。シンガー・ソングライターとしてのCorneliusの在りようを示す重要作だ。