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新しい一歩目のアルバム

 そうやって曲作りを進め、多忙な合間を縫って6月半ばに録り終えたという『PER→CENT→AGE』では、大半をチッチ自身が作詞/作曲。編曲はkoyabin(THIS  IS JAPAN)とJ. ogが主に担当し、ギターには馬場庫太郎(NENGU)、ベースにカワノアキ(ar syura)、ドラムスにRyosuke Take(yhojin)、てらだ(FENNEC FENNEC/carpool)といった仲間たちが曲ごとに演奏の核を担う。なかでもクレジット的に特に目を引くのは、敬愛する峯田和伸(銀杏BOYZ)、そしてマーシーこと真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)の楽曲提供だ。

 「新しい一歩目のアルバムには自分のルーツを詰め込みたくて、峯田さんとマーシーさんに頼んだのは、〈この人たちの音楽があったから私はいまここにいて、新しい表現を一緒にやってみたいと思ったんです〉っていう意思表示ですね」。

 峯田が作曲した“決心”は、2018年のソロ・デビュー企画で“夜王子と月の姫”をカヴァーし、以降も対バンやMV共演などを通じて交流を深めてきた彼女にとって、まさに念願のものだろう。杉森ジャック(THIS IS JAPAN)によるアレンジの疾走感も青春モードに拍車をかける。

 「〈夜王子〉のときは、新しく私が歌うからこそ銀杏BOYZを通ってない人たちにも聴いてもらえるように生まれ変わらせてほしいっていう思いでリーガルリリーに頼んで。今回は峯田さんが一緒に新しいCENTとしての道を作ってくれたから、銀杏BOYZを愛してる人にアレンジしてほしくて、杉森さんにお願いしたら凄くいいものになりました。歌詞の〈君〉っていうのは銀杏BOYZの音楽のことで、〈自分が学生時代にこの音楽に救ってもらって、いまこうやって表現してるんだよ〉って伝えたくって素直に書きました」。

 一方で真島による“あそぼーよ”は童心に帰ったマーシー節が微笑ましい一曲で、富澤タク(グループ魂)の編曲がノスタルジックな夏の匂いを掻き立ててくる。

 「〈みんなのうた〉みたいですよね。マーシーさんとはご挨拶したこともなくて私が一方的にライヴを観ていただけなんですけど、お願いしたい人を考えるなかで名前を挙げたら実現してもらえました。コロナ禍でブルーハーツの“青空”をすごく聴いていて、その頃アーティストの人たちの〈歌つなぎ〉みたいなのが回ってきた時に“青空”を歌ったんですよ。それで今回いただいた歌詞に〈何もないから青空がある〉ってあったのが、人生が繋がった感じがして嬉しかった。マーシーさんはもちろんそんなこと知らないと思うんですけど(笑)。少年みたいな音楽を作ってもらえて、何か可愛いです」。

 そうした大先輩たちの助力がある一方、おかもとえみが同世代感覚でガーリーな“ナポレオーネ通りにて”を提供しているのもポイントだ。彼女は内省的でチルなラップ調の“紙ヒコーキと晴れのちコーヒー”をチッチと共作してもいる。

「えみそんは私の意図をフラットに汲み取って、会話するように音楽を作ってくれるお姉ちゃんですね。“ナポレオーネ通りにて”は、大好きなPUFFYみたいな、女の子がうまく歌おうとしてない感じのワクワクするような曲をやりたくてお願いしたら、最高なのを作ってくれました。“紙ヒコーキと晴れのちコーヒー”はもともと違う雰囲気で途中まで出来ていたのを、〈女友達に話してるような音楽が作りたいんだよね〉って相談して色付けしてもらったっていう感じで」。