MUNI LONG
2024年のR&Bを象徴するヒット・アルバム

 ソングライター名でもある本名のプリシラ・レネイ名義でポップ・シンガーとして活動を始め、2019年からマニー・ロング名義でR&Bシンガーとして再スタートを切ったソングストレス。“Hrs And Hrs”(2021年)のロングヒットに続き、2023年に放ったバラード“Made For Me”がふたたび年を跨いでのヒットとなり、2024年のR&Bを代表する一曲となった。ジョーダンXLと共に同曲を手掛けたのは、往時のアトランタR&Bの立役者で、近年もアリ・レノックスやDVSNらを手掛けて最前線に返り咲いているジャーメイン・デュプリ(JD)とブライアン・マイケル・コックス。ピアノやドラムマシーンで紡がれたトラックを含め、かつてJDが手掛けたマライア・キャリー“We Belong Together”の再来的な雰囲気が感じられたが、そのことを裏付けるようにマライアを招いたリミックスも登場。そして、JDに続いてマライアを手掛けていたトリッキー・スチュアートが約半数の曲を制作したのが、マニー・ロング名義での2作目となる『Revenge』だ。

MUNI LONG 『Revenge』 Def Jam(2024)

 ブライアン・マックナイトやディアンジェロの名曲を下敷きにしたバラード、スクリューの手法を用いた曲など、アルバムには懐かしい成分も含まれる。そこにジャージークラブ調などの尖鋭的な要素も交えてマニーの歌から生々しい感情を引き出したトリッキーの職人技に改めて唸らされた。OGパーカーらの制作で112の曲をサンプリングし、グロリラが客演したヒップホップ・ソウル“Leave My Baby Tonight”も含めてアトランタR&Bの新旧が交錯するあたりは、アッシャーの最新作ともシンクロする。過去に共演済みのスウィーティがペンを交えた“The Baddest”、ジェフ・ギッティが手掛けた“Ruined Me“など、“Made For Me”だけではないバラードの訴求力には息を呑む。結婚生活の破綻を原動力にして力強い音楽へと昇華させた本作は、R&Bというジャンルの本質を抉り出していた。

マニー・ロングの2022年作『Public Displays Of Affection: The Album』(Def Jam)