
東京ドームに鳴り響いた“ピアノ・マン”
ショーの終盤、“真夜中のラブコール”や“若死にするのは善人だけ”などのノリの良いナンバー、そしてアルバム『ストレンジャー』収録の人気曲“イタリアン・レストランで”を繰り出し、ひとしきり場内のオーディエンスを盛り上げたビリーは、おもむろにハーモニカホルダーを首にかける。その動作だけで、あの曲が演奏されることを観客はすぐに察知し、「ウォ~」と歓声が沸いた。「Why?」とその反応に不思議そうな表情を見せたビリーは少し間をとり、観客の期待をはぐらかすかのようにハーモニカをふた吹きし、演奏に突入。
もちろん“ピアノ・マン”だ。
この夜、幾度となくあった盛り上がりの場面だが、やはりこの曲の破壊力は群を抜いていた。この曲が書かれたのは今からちょうど51年前の1973年1月~2月。当時のビリーは、ロサンゼルスにあったピアノバー、エグゼクティヴ・ルームで酔っ払い相手の〈ピアノ・マン〉に甘んじていた。そこで目にした光景を忘れまいと歌に刻んだのが、今やビリーの代名詞となったこの曲だ。半世紀の時を経て、小さなバーに週6日レギュラー出演のピアノ弾きから、世界一有名な会場(MSG)に毎月レギュラー出演するスーパースターになった今のビリーは「この曲無しでは俺のライブは成り立たない」と語るほど、ショーの重要な局面でこの曲を披露している。昨夜も、ビリーが紡ぎだした数々のメロディに散々酔いしれたオーディエンスにとどめを刺すかのように、ワルツ調のリズムでオーディエンスの身体をスイングさせ、さらに心地よい気分にさせてくれた。
最後のサビでは全世界共通の〈お約束〉、大合唱が巻き起こった。オーディエンスひとりひとりが“ピアノ・マン”の詞世界に登場するキャラクターになり、ステージ上のピアノ弾きに願いを乞う。
Sing us a song you’re the piano man(歌ってよ、ピアノ・マン)
Sing us a song tonight(今宵、歌って欲しいんだ)
Well we’re all in the mood for a melody(みんなメロディに酔いしれたい気分なのさ)
And you’ve got us feeling alright(心地よくさせてよ、その調べで)
“ヘイ・ジュード”(ビートルズ)など、コンサートで大合唱が巻き起こる名曲は数あれど、これほどまでに演者と観客の関係がその場の状況にピッタリとシンクロするシンガロングソングも珍しいだろう。
鳴り止まない拍手の中、ビリーは一旦ステージを後に。
盛大な拍手に応えるべく、再びステージに現れたビリーはギターを抱えて登場。まずは“ハートにファイア”。ビリーが誕生した1949年からこの曲が発表された1989年までに起こった出来事を並べた斬新な歌詞で全米1位に輝いたロックチューンだ。ステージの背後とサイドに配置された正方形の4つのスクリーンには、歌詞で歌われる人物や出来事が次々に映し出された。続いては“アップタウン・ガール”。スタンドマイクを手にコミカルな動きを交えつつ、二人目の妻クリスティ・ブリンクリーに捧げた全米3位のポップチューンを歌い上げた。引き続き、スタンドマイクを操りながら全米1位の“ロックンロールが最高さ”を熱唱。スクリーンには1980年発表の同曲のミュージックビデオが映し出され、全盛期の若々しいビリーと74歳のビリーが時空を超えて共演。続いてはピアノに戻り、全米14位の“ビッグ・ショット”、そしてこの日のラストナンバーになった全米7位の“ガラスのニューヨーク”を披露。“ピアノ・マン”で最高潮に達したかと思われた盛り上がりだったが、この大ヒット曲の怒涛の5連発も流石に圧巻の威力。超一流のエンターテイナーによる凄まじいまでのパフォーマンスをまざまざと見せつける、見事なアンコールの数々だった。
笑顔でスタンディングオベーションを贈る大観衆の様子を隅々まで見渡すビリー。「アリガトウ、トウキョウ!」の言葉を残し、ファンに別れを告げた。午後9時25分、終了。
ビリーの旅はまだまだ続く
夢のような2時間22分を堪能し、我に返ると、「あれ、新曲やらなかったね?」と気付くファン。前日の衝撃のニュースを完全に忘れさせてしまうような充実のパフォーマンスだった(ビリーもその件には一切触れなかった)。その新曲は、1週間後の2月1日に全世界同時にベールを脱ぐ。
さて、冒頭で触れたMSGでのレジデンシー公演だが、需要はあるものの、同会場での通算150回目の公演にあたる今年7月25日の公演を以って終了することが決定している。その時点で75歳のビリーが遂にライブパフォーマーとしての活動を終えるのではなないかと危惧されたが、現在ビリーの地元ロングアイランドで開催中の回顧展〈Billy Joel: My Life〉のお披露目会でビリーは「ツアーは止めないよ。仕事は続ける。ただ、同じ場所でやるのはもうお仕舞だ。これからは色んな場所でやるのさ」と語り、今後もライブパフォーマーとして活動する意向を示した。
2023年7月21日に昨夜の来日公演を発表、コンサート前日の23日には新曲のリリースを発表。1年前であれば、ほぼ全てのビリーファンがあきらめかけていた日本公演と新曲のリリースがわずか6ヶ月で現実のものになった。先の発言の通り、次の日本公演も大いに可能性はあるのではないだろうか!
SET LIST
2024年1月24日@東京ドーム
1. My Life/マイ・ライフ
2. Movin’ Out (Anthony’s Song)/ムーヴィン・アウト
3. The Entertainer/エンターテイナー
4. Honesty/オネスティ
5. Zanzibar/ザンジバル(冒頭に“さくらさくら”の一節)
6. An Innocent Man/イノセント・マン(冒頭にローリング・ストーンズ“Start Me Up”をビリーがモノマネ歌唱)
7. The Longest Time/ロンゲスト・タイム
8. Don’t Ask Me Why/ドント・アスク・ミー・ホワイ
9. Vienna/ウィーン
10. Keeping The Faith/キーピン・ザ・フェイス
11. Allentown/アレンタウン
12. New York State Of Mind/ニューヨークの想い
13. The Stranger/ストレンジャー
14. Say Goodbye To Hollywood/さよならハリウッド
15. Sometimes A Fantasy/真夜中のラブコール
16. Only The Good Die Young/若死にするのは善人だけ
17. The River Of Dreams/リヴァー・オブ・ドリームス(ブレイクにバンドメンバーのクリスタル・タリエフェロがアイク&ティナ・ターナーの“River Deep - Mountain High”を歌唱)
18. Nessun dorma/誰も寝てはならぬ(バンドメンバーのマイク・デルジュディスが歌唱)
19. Scenes From An Italian Restaurant/イタリアン・レストランで
20. Piano Man/ピアノ・マン
ENCORE
21. We Didn’t Start the Fire/ハートにファイア
22. Uptown Girl/アップタウン・ガール
23. It’s Still Rock And Roll To Me/ロックンロールが最高さ
24. Big Shot/ビッグ・ショット
25. You May Be Right/ガラスのニューヨーク
プレイリスト:https://billyjoeljp.lnk.to/Setlist2024AW
RELEASE INFORMATION
ビリー・ジョエル“Turn The Lights Back On”

リリース日:2024年2月1日(木)
世悪・配信リンク:https://billyjoel.lnk.to/TTLBO
TRACKLIST
1. Turn The Lights Back On

■完全生産限定盤(3枚組:SACD+CD+DVD)
リリース日:2024年2月28日(水)
品番:SICP10151-4
価格:6,600円(税込)
TRACKLIST
DISC 1(SACD)|『ピアノ・マン』オリジナル・アルバム【SACDマルチ4chハイブリッド・ディスク仕様】
▶SACD層(全10曲)Multi 4ch|Stereo 2ch
4chミックス世界初SACD化 2023年DSDマスタリング(クアドラフォニックLP 4chミックス・マスターより)
▶CD層(全10曲)Stereo 2ch 2023年DSDマスタリング
1. 流れ者の祈り
2. ピアノ・マン
3. 悪くはないさ
4. 僕の故郷
5. さすらいのビリー・ザ・キッド
6. 陽気な放浪者
7. ネバダ・コネクション
8. 愛する言葉に託して
9. 小雨降るパリ
10. キャプテン・ジャック
DISC 2(CD)|レア・トラックス(ライヴ&デモ)【高品質Blu-spec CD2仕様】
全16曲(うち7曲が世界初CD化)2023年デジタルリマスター
1. ピアノ・マン(シングル・エディット)
2. 流れ者の祈り(ライヴ - 1972)
3. さすらいのビリー・ザ・キッド(ライヴ - 1972)
4. キャプテン・ジャック(ライヴ - 1972)
5. ジョセフィン(デモ - 1972)★
6. オイスター・ベイ(デモ - 1973)
7. ピアノ・マン(デモ – 1973)
8. ザ・ジークフリード・ライン(デモ - 1973)
9. ニュー・メキシコ(デモ - 1973)
10. クロス・トゥ・ベアー(デモ - 1974)
11. さよなら、アイク牧師 ★
12. 小雨降るパリ(ライヴ - 1975)★
13. 僕の故郷(ライヴ - 1975)★
14. 流れ者の祈り(ライヴ - 1975)★
15. さすらいのビリー・ザ・キッド(ライヴ - 1975)★
16. 悪くはないさ(ライヴ - 1975)★
M2, 3, 4:Live At Sigma Sound Studios, April 15, 1972, WMMR Radio, Philadelphia, PA
M12, 13, 14, 15:Live at the Great American Music Hall, 1975
★世界初CD化
DISC 3(DVD)|レア・ビデオズ
全11曲(うち8曲が世界初DVD化)
1. ピアノ・マン(1973 オリジナル・ミュージック・ビデオ)●
2. ピアノ・マン(オフィシャル・ミュージック・ビデオ)
3. ピアノ・マン(ライヴ - 1976)●
4. 僕の故郷(ライヴ - 1976)●
5. さすらいのビリー・ザ・キッド(ライヴ - 1976)●
6. キャプテン・ジャック(ライヴ - 1976)●
7. 悪くはないさ(ライヴ・フロム・オールド・グレイ・ホイッスル・テスト1978)
8. 僕の故郷(ライヴ・アット・スパークス1981)●
9. ピアノ・マン(ライヴ・フロム・ロング・アイランド:ナッソー・コロシアム 1982)●
10. さすらいのビリー・ザ・キッド(ライヴ・フロム “リヴァー・オブ・ドリームス” ツアー 1994)
11. エヴリバディ・ラヴズ・ユー・ナウ(オフィシャル・ビデオ 1971)bonus feature●
M3, 4, 5, 6:Live from ”Billy Joel Tonight” - Connecticut 1976
●世界初DVD化
封入特典など詳細はこちら:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/info/559671
ビリー・ジョエル公式(海外)サイト:http://www.billyjoel.com/
ソニーミュージック(日本)の〈ピアノ・マン50周年 × 来日記念〉特設ページ:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/page/pianoman50
ソニーミュージック(日本)のアーティストオフィシャルページ:http://www.sonymusic.co.jp/artist/BillyJoel/