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3月17日(日)ラインナップ

NOFX

Photo by Susan Moss

フェス2日目のトリを務めるのは、すでに解散を示唆しているNOFXだ。2023年に結成40周年を迎えたバンドは、嘘か本当か、これが最後の来日になる可能性が高い。

ファット・マイク(ボーカル、ベース)を筆頭にNOFXの言動すべてがパンクそのものを体現していると言ってもいいだろう。それほど彼らが後進に与えた影響は大きく、特にHi-STANDARDを成功に導いた功績は計り知れない。Hi-STANDARDの存在もまた、今に続く日本のバンドシーンに多大なる影響を及ぼしていることを考えれば、NOFXがいなかったら現在の日本の音楽シーンの全体図はもう少し違ったものになっていたはずだ。

Hi-STANDARDも見出したマイク主宰のレーベル、ファット・レック・コーズは当時世界最大規模のインディーレーベルとして異彩を放ち、大手メジャーレーベルを凌ぐほどの利益を生み出す時代もあった。NOFXのほか、ラグワゴン、レス・ザン・ジェイク、ミー・ファースト・アンド・ザ・ギミー・ギミーズ、スナッフ、そしてHi-STANDARD(95年『GROWING UP』はマイクがプロデュース)などが傑作を続々とリリースし、エピタフと肩並べる形でパンクシーンの隆盛に貢献した。

すでに本記事が掲載されたころには、Hi-STANDARDをゲストに迎えた単独でのジャパンツアーもスタートしている。どの曲を演奏するのかという予想も野暮なくらい、披露される楽曲すべてに全身全霊を持ってぶつかってほしい。きっと“Linoleum”や“Leave It Alone”はやってくれるだろうし、個人的には“Stickin’ In My Eye”や“Eat The Meek”もプレイしてくれたら嬉しい。リスナーの数だけ夢と希望を与え続けてくれたNOFX、彼らが完全燃焼できるかは我々オーディエンスの熱量にもかかっているのだ。

 

Hi-STANDARD

単独ツアー、そしてこの〈PUNKSPRING〉まで盟友NOFXの最後の来日に帯同するHi-STANDARD。2023年2月に恒岡章(ドラム)が逝去したHi-STANDARDもまた、NOFX同様、大きな分岐点に立っている(なお、単独ツアーと同フェスではThe BONEZのZAXがドラムを務める )。

Ken Yokoyama(ギター)は、先日〈横山健の別に危なくないコラム〉にてハイスタとNOFXの関係について綴っていた。NOFXの解散を「2022年の夏の終わり頃には知っていた」と述べ、「いまでも解散して欲しくない」と正直に胸の内を明かしている。そこにはバンドキッズとしてのKen YokoyamaとHi-STANDARDの姿が書かれているので、ぜひ一度チェックしてほしい。

Hi-STANDARDにとって、今年が〈PUNKSPRING〉初登場でもある。前述したとおりNOFXのはなむけとしての意味も込められているだろうが、今年ハイスタがいるかいないかでフェス全体のまとまりも大きく違っていたはずだ。Hi-STANDARDが〈PUNKSPRING〉のステージに立つ、その瞬間はもう目の前に迫っている。

 

ザ・ダムド(The Damned)

ロンドンパンクを代表するダムドも、結成から48年目を迎えた。セックス・ピストルズ、ザ・クラッシュの名を挙げるまでもなくパンクの礎を築いた1組だが、他2組とは性質もサウンドもまったく異なる、唯一無二な存在感を放ち続けている。2023年にはオリジナルメンバーのラット・スケイビーズ(ドラム)が復帰。デイヴ・ヴァニアン(ボーカル)、キャプテン・センシブル(ギター)とともに結成時に近い形態で現在は活動している。

初作にしてパンクの金字塔である『Damned, Damned, Damned』(77年、邦題は『地獄に堕ちた野郎ども』)は現在にいたる〈パンクの雛形〉を作り上げ、“New Rose”“Fan Club”が収録されていたことで多くのキッズが楽器を手に取り、パンクの道へと進んでいった。

また、早くから吸血鬼を連想させるフェイスメイクで注目を集めていたデイヴが、『Phantasmagoria』(85年)で一気にゴシック/ゴスの扉を開けたことも衝撃的だった。当時はニューウェイブ全盛だったこともあり、音楽性もそれにあわせてクリアなものになっていたが、結果的にそうしたビジュアルも含めた様式美に魅了されたリスナーが次世代のムーブメントを形成していった。

2018年リリースの『Evil Spirits』はプロデューサーにトニー・ヴィスコンティを迎えた意欲作として、当時キャリア41年目にして初のUKアルバムチャートのトップ10にランクインするという偉業も成し遂げている。最新作『Darkadelic』(2023年)ではグラムロック風なメロディー先行のナンバーも増えつつ、熟練の域に達したタイトなアンサンブルでパンクのスピリットを今に伝えている。

NOFX、Hi-STANDARDへとバトンを渡すダムドのステージに要注目だ。