漢 a.k.a. GAMIが主宰する鎖GROUPと、その傘下で新代表にDARTHREIDERを迎えたBLACK SWAN――新体制のレーベルから2トップのEPが同時リリースに

 漢 a.k.a. GAMIが主宰する鎖GROUPと、その傘下で新代表にDARTHREIDERを迎えたBLACK SWAN。その2トップ体制と新たな契約アーティストを公開した6月のDOMMUNE特番では、漢とMSCによる前所属レーベルへの訣別宣言まで飛び出し、日本語ラップ・シーンに止まらぬ反響を呼んだのも記憶に新しい。一方ではFM番組「BLACK SWAN RADIO SHOW」のスタートや〈9SARI STUDIO AUDITION〉のUstream開催など、さまざまな仕掛けも続くなか、いよいよ2トップのEPが同時リリースとなった。ここから本格的な量産体制に入る両レーベルについて、代表に話を訊いてみよう。 

漢 a.k.a. GAMI 『9sari』 鎖GROUP(2014)

DARTHREIDER 『REIDERS EP』 BLACK SWAN(2014)

 

――両EPは、互いの初共演含め、両レーベルのチーム的な結束も窺わせる内容になってますね。

漢 a.k.a. GAMI「これから出る全部の作品になるべくみんなが絡み合ってるような作り方で、1月までのリリースに参加してる人には〈ツアーチームみたいな感じで考えてくれ〉って言ってる。だからリスナーもこれから楽しくなると思うよ」

DARTHREIDER「ウチら2人に関してはお互いやり口をわかってるから、あとはこの鎖STUDIOで録ることによって、その磁場の影響が加わればって感じ。スタジオのミックス/マスタリングもかなり大陸なサウンドになってるから」

「要はこの3、4年間でUSのトップのエンジニアがやってる、デジタルからアナログを通してまたデジタルにっていう処理でハイブリッドな要素を引き出すやり方があるらしいんだけど、それを流行りとは違う機材で解釈した手法だよね。それがいい感じになった」

――実際の制作面ではどうでしたか?

「俺の『9sari』に関して、俺個人としてはいつも通りだね。とりあえず何も考えずに曲を作ってって、そこに〈リスナーが求めてるMC漢〉も意識して付け足してった感じ。フィーンドと共演した“500 horses”に関しても、たまたまフィーンドに日本人ラッパーを起用しようって話があるってところから対等なビジネスとしてやった。ディス(Libraに宛てたMSC勢共演の“the first and the last diss song”)にしても、どうせディスるんならエンターテイメントとして少しでもメイクマネーに繋がればいいかなっていう」

D「格闘技の試合といっしょで、ディスを見たいんだったら入場料払ってね、っていう(笑)。まあ、漢のEPはビート選びの部分から世界レヴェルのヒップホップでいま起こってることに並べられるスケールのものになったし、ブレない感じで出来たと思う。逆に俺の『REIDERS EP』は、DJ WATARAIビーツの“REIDERS”からして、いままで以上に元気にがんばってます!みたいなテンションで(笑)。一度倒れてからは枯れてニール・ヤング化してもいいと思ってたし、力を込めないで一人で歌える範囲の話をしていくのもアリかなあって思ってたんだけど、やっぱ漢に誘われた今の状況と環境があって、このテンションになれたんだよね」

「まあ俺もDARTHの作品を研究熱心な感じで聴いてきたわけじゃないけど、良くなってんじゃない? ここ数年のDARTHは自虐というか、〈自分一人になっちゃった〉っていうスタンスのラップをしてたけど、若いのを連れてたダメレコの頃とは違って、久々にもうちょっと頼れるような奴らといっしょにいるっていう集団性が出てるし」

D「今回の客演はクセ者ばっかだけど、そんな奴らもいるっておもしろさがヒップホップは大事だと思うし。例えば“HOOD TOOK ME UNDER”の場合は、別にギャングスタでもない俺がD.OとかT.O.P.みたいな奴らと曲をやるならどうすんの?ってところで、このアイデアなら渡り合えるぜっていうことがやれたし、引き出しがすごい増えて遊びやすくなったかな」

――その新たな引き出しも含めて、漢くんが“my money long”で〈スキルを身につけるだけじゃダメ/生き様で証明するまでは〉と歌った精神を共有してるかと。

「ヒップホップにはそこがないと結局リスナーが反応しないっていうか、そういうストーリーのあるほうが興味を引くよねっていう話はDARTHともしてたね。ただ、音楽に向かう姿勢としては意外とラフに作ってて、〈こういう内容にしよう〉とか、〈こういう音楽にしないとね〉って話は別にお互いしてないけど」

――両レーベルで次に控えるEPについては?

D「BLACK SWANから出すGOKU GREENの『ACID & REEFER』に関してはヒッピー感溢れる、ゆるいソウル的なアプローチになると思う。GOKUは両方のレーベルを通じていちばん音楽的なポテンシャルがある奴だと思うし、本人的にはすごく楽に作ったEPだと思うんだけど、あとは早くネクスト・ステージに連れていくきっかけをレーベルで作るだけ」

「D.OのEP『TOKYO RAP CARTEL』もヤバくなるよ」

D「D.Oが俺のEPで歌ってくれてる話も〈日本もついにここまで来たか〉っていう怖い内容だけど、それでいてコミカル&ユーモラスでリアルなギャングスタっぷりがハンパないんじゃないかな。鎖GROUPから出すってことも含めたエンターテイメント性のあるD.O節が全開になるんで、楽しみにしていてほしいね」

【次号へ続く!】

 

▼漢が客演した近作を一部紹介

左から、PRIMALの2013年作『PROLETARIAT』(MUJO/Pヴァイン)、LIBROの2014年作『COMPLETED TUNING』(AMPED MUSIC)、韻踏合組合の2014年のシングル“一網打尽 REMIX”(IFK)、PUSHIMの2013年作『It’s Drama』(キューン)
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▼DARTHREIDERが客演した2014年の作品を一部紹介

左から、伊集院幸希の『月曜日と金曜日』(HOTWAX)、SKE48のシングル“未来とは?”(avex trax)、KO-neyの『Pad Craft』(TOP BILLIN’)
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▼関連作品

左から、GOKU GREENの2013年作『Thrill Of Life』(BLACK SWAN)、D.Oのベスト盤『D.O THE BEST』(VYBE MUSIC)
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鎖GROUP

漢 a.k.a. GAMIが2012年に設立したレーベル。DJ琥珀、MASTERと共に活動を続けながら、今年6月に4組のアーティストと契約を発表。漢自身のEP『9sari』を9月に発表したのを皮切りに、10月にD.O、11月にHI-BULLET(CORN HEAD)、12月にDOGMA、2015年1月にLORD 8ERZ a.k.a. DJ GATTEMの作品をそれぞれリリースしていく予定!

MC漢 & DJ琥珀の2012年作『MURDARATION』(鎖GROUP)
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BLACK SWAN, INC.

MSCやSCARS作品などのA&Rを務めた佐藤将が2011年に設立、翌年より本格始動したレーベル。〈想定外〉を謳ったオムニバスEPを連続リリース。そこでフックアップしたGOKU GREENをデビューに導いたことでも知られている。2014年3月5日に佐藤が急逝したことを受け、鎖GROUPを母体にDARTHREIDERが代表を務める新体制で再興。DARTHREIDER自身による9月の『REIDERS EP』を皮切りに、10月にGOKU GREEN、11月にPONY、12月にLIBRO、2015年1月にMSCの作品をそれぞれリリースしていく予定!

左から、2012年のEP『BLACK SWAN 1』『BLACK SWAN 2』、GOKU GREENの2012年作『HIGH SCHOOL』、2012年のEP『BLACK SWAN 3』、2013年のEP『BLACK SWAN 4』(すべてBLACK SWAN)
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