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ヨットロック以降の新たな欧州AOR

――日本のファンにも特に評判が良かったアーティスト、タイトルを挙げるとすると、どのあたりになりますか?

「今回のコンピにも入っていますが、マーティン&ガープをはじめオランダのアーティストには好反応が多いですね。オランダではイギリスのヤング・ガン・シルヴァー・フォックスの人気がとても高いんですが、サウンド的にも同傾向の王道AOR路線のバンドがたくさんいて、日本人の好みにもぴったり来るんだと思います。同じような意味で、さっき名前を上げたステイト・カウズなど、北欧のアーティストも強いですね」

MARTIN & GARP 『Sentimental Fools』 Legere/Pヴァイン(2020)

YOUNG GUN SILVER FOX 『Ticket To Shangri-La』 Légère/Candelion/Pヴァイン(2022)

STATE COWS 『High And Dry』 State Cows/Pヴァイン(2022)

――ヨーロッパのシーンが盛り上がっているのは、2010年代に盛り上がった例の〈ヨットロック〉の人気も影響しているんでしょうか?

「それは大いにありますね。〈ヨットロック〉という言葉自体はアメリカから出てきたものですけど、今はむしろヨーロッパの方が浸透している印象です。アメリカで〈ヨットロック〉っていうと、いわゆる〈懐メロ〉っていうか、ちょっと気恥ずかしさが混じった音楽っていうネガティブな認識が拭いきれないと思うんですが、ヨーロッパだとそのあたりはもう少しフラットだと思います。

もちろん、アメリカでもペイジ99とかが出てきていますけど、ヨーロッパのアーティストにくらべると割と年齢が行っている人が多い感覚で(笑)」

PAGE 99 『99.3 FM』 Page 99/Pヴァイン(2024)

――両地域の指向の違いは、〈ヨットロック〉のブーム以前にもあったんでしょうか?

「ありました。例えば、TOTOはある時期からアメリカ国内では人気が急下降していくんですけど、ヨーロッパだと逆に上がっていくんですよね。ツアーも盛んにやっていたし。そもそもペイジ99は、スウェーデンのステイト・カウズの影響でスタートしている。アメリカじゃ完全に過去へと追いやられたスタイルでしたから、逆に〈まだ可能性があるんだ〉と気づかされたそうです」

 

「Light Mellow Searches All Catalog List 2015-2024」

北欧ではスティーリー・ダンよりペイジズが人気?

――コンピに付属しているブックレットには、各アーティストが影響を受けた様々なレジェンドの名前も挙げられていますけど、中でも頻出するのがスティーリー・ダンですね。

「やっぱり彼らは別格的な人気がありますね。他にない特徴的なサウンドなので、プロなら一度はコピーしてみたくなるのというのも大きいと思います」

STEELY DAN 『Aja』 ABC(1977)

――ちょっと意外だったのは、ペイジズの名前が頻繁に出てくることです。

「彼らは、北欧だとスティーリー・ダンの上を行くくらいの浸透度があるんですよ。ある局地的なエリアの熱気は本当にすごい(笑)。アマチュアやセミプロでペイジズをコピーしている人が結構いますし。どうやら、スティーリー・ダンほどR&B色が濃くなくて、スリリングでジャズっぽいテイストが受けているみたいです」

PAGES 『Pages』 Epic(1978)

PAGES 『Future Street』 Epic(1979)

――今回の収録曲の中には、実際にオリジナル世代のベテランアーティストがゲスト参加している例もありますよね。元シカゴのビル・チャンプリンの名前が何度も出てくるのがとても印象的でした。

「日本のAORファンは大物の名前に反応しやすいので……(笑)。

それにビルの場合は若手からのオファーにも積極的に応えていくタイプで、ファイル交換でもフットワーク軽く歌っちゃう人ですから」

BILL CHAMPLIN 『Single』 Full Moon/Epic(1978)

BILL CHAMPLIN 『Runaway』 Elektra(1981)

――彼のかつてのソロアルバムが現行アーティストの間で特に人気が高いとかそういう理由もあるんでしょうか?

「それもありますが、意外とそれだけじゃなくて(笑)。彼がジェイソン・シェフと一緒にボーカルを担当していた時期のシカゴの人気が妙に高いんですね。日本だとシカゴは初期から人気だったし、ピーター・セテラがいた時代に思い入れがある人が多いと思うんですけど、ヨーロッパのAORファンの主流はちょっと世代が下なので、それ以降の作品の方が熱く支持される傾向にあります。

CHICAGO 『Chicago 17』 Full Moon/Warner Bros.(1984)

CHICAGO 『Chicago 18』 Full Moon/Warner Bros.(1986)

CHICAGO 『Chicago 19』 Full Moon/Reprise(1988)

さっき言ったように、TOTOもそう。ボビー・キンボールよりもジョセフ・ウィリアムズ時代に思い入れがある人が多いんです」

TOTO 『Fahrenheit』 Columbia(1986)

TOTO 『The Seventh One』 Columbia(1988)