これがAORだ! チャンプリン・ウィリアムス・フリーステットの新作が登場

 CWF――AORリスナーにとってこのイニシャルはもはや、どんなときにも闘魂を注入してくれるマジック・スペルになっているんじゃないか。そんな頼もしい音楽を提供してくれるプロジェクト、チャンプリン・ウィリアムス・フリーステット。メンバーは、デヴィッド・フォスターをプロデューサーに迎えたアダルト・コンテンポラリー色濃い楽曲が次々にヒットした80年代のシカゴ、その第2次黄金期の立役者となったビル・チャンプリン=C。映画音楽界の巨匠、ジョン・ウィリアムスの息子にしてTOTOの3代目ヴォーカリストであるジョセフ・ウィリアムス=W。そしてそのチャンプリンやウィリアムスらがクリエイトしてきた西海岸サウンドを聴いて育ったスウェーデンのギタリスト、ピーター・フリーステット=F。21世紀AORリヴァイヴァルを語るうえで欠かせない作品『The L.A. Project』(2002年)をきっかけにLAシーンのレジェンドとの付き合いが始まったフリーステットは、自身主導でウィリアムスとの『Williams / Friestedt』(2011年)を制作するなど親交を深めていったわけだが、2015年にこの黄金トライアングルを結成したことは大きな驚きを我々に与えてくれた。誰もが期待していたであろう〈シカゴ meets TOTO〉なサウンドへのアプローチ。それを実現させたファースト・アルバム『CWF』は、格別なときめきを味わわせてくれたのだ。嬉しいことにCWFは一過性のものにならず、2020年にマイケル・マクドナルドやランディ・グッドラムも参加した『CWF2』をリリース。そして2023年のEP『Carrie』を経て、今回の『CWF3』に至る。ひとまず3者の変わらぬやる気と意欲に大きな拍手を送りたい。

CHAMPLIN WILLIAMS FRIESTEDT 『CWF3』 ソニー(2024)

 前述したEPからの3曲と新録の7曲、さらに“Stay With Me”のリテイク版を加えた全11曲から成る本作。ウィリアムスが新生TOTOやスティーブ・ルカサーのソロに大々的に関わっていることは周知の事実で、今回どれぐらい活躍してくれるのか心配していたところがある。その代わりといってはなんだが、新作では頼りになる助っ人としてジェイソン・シェフが招聘され、華々しい活躍を見せている。ピーター・セテラ脱退後、シカゴのメイン・ヴォーカルを務め、大きな成果を残した彼が“Carrie”と“Sure”の2曲にフィーチャーされているのだが、チャンプリンとの熱い絡みを披露する前者“Sure”、間奏にホーンを入れたら……と想像してニンマリせずにはいられない後者共に、デヴィッド・フォスターが絡んでいた時代のシカゴを彷彿とさせる楽曲だ。ウィリアムスの溌溂としたヴォーカルが冴える“Brighter Day”“Wings Of Tomorrow”というメロディーが立ちまくったアップ・チューンも良いが、ここではチャンプリン主導のファンキーな“Almost Had Me There”に注目したい。前のめり気味なヴォーカルとハードなギターの鳴りがめっぽうスリリングで、無条件に興奮を掻き立てられる。あとリメイク系では、名盤『Once In A Lifetime』(84年)で知られるマイケル・ラフがゲスト参加し、自身の『Speaking In Melodies』(93年)に収められていた“I Will Find You There”を披露してくれていることにテンションが上がる。86年のサントラ『Miami Vice II』にてチャンプリンとパティ・ラべルのデュエットで歌われていた隠れた名バラード“The Last Unbroken Heart”が、伴侶のタマラ・チャンプリンをお相手にソウルフルによみがえっているのもたまんないプレゼントだ。

 というように、またしても〈これこれ!〉と叫びたくなる場面の連続だったこの新作。口ほどにモノを言うメロディー、パワフルなヴォーカルの掛け合い、そしてしっかりと血の通ったプレイにどこまでも緻密に構築されたサウンド・プロダクションなど最高峰と呼ぶに相応しいものが揃っているし、AORっていったいなんだ?というシンプルな問いに対して正確かつ簡潔な答えが詰まった作品だと称することも可能だ。

 さらに見逃せないのが、日本盤に収録される4曲のボーナス・トラック。シカゴの大名曲“Hard To Habit To Break”をはじめ、充実のライヴ・テイクが並べられていて、9月に予定されているCWFとしては8年ぶりの来日公演への期待が大きく膨らむ。まったくもってありがたい限りだ。

チャンプリン・ウィリアムス・フリーステッドの過去作。
左から、2016年作『CWF』、2020年作『CWF2』(共にBlack Lodge/ソニー)

ジョセフ・ウィリアムスの2021年作『Denizen Tenant』(The Players Club/Mascot/ソニー)