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ケンドリック・ラマーVS.ドレイクの終わらないディス曲合戦

4月12日には、フューチャーとメトロ・ブーミンが『WE DON’T TRUST YOU』の続編となるアルバム『WE STILL DON’T TRUST YOU』を発表。ここでザ・ウィークエンドやエイサップ・ロッキー、そして身を引いたJ. コールが客演に参加していることによって両陣営、というよりドレイクの四面楚歌感が強化される形になる。

FUTURE, METRO BOOMIN 『WE STILL DON’T TRUST YOU』 Wilburn Holding Co./Boominati/Epic/Republic(2024)

翌日、ドレイクがシングル“Push Ups”をリリースすることで応酬。ここからケンドリック対ドレイクの図式がより明確になっていくが、驚くべきはそのスピード感だ。

4月19日、ドレイクが再び“Taylor Made Freestyle”をリリース。これは、音声変換AIを使った非常に今っぽく奇妙な方法で、2パック(ケンドリックが最もリスペクトするラッパーの一人)と、同じく西海岸を代表するラッパーであるスヌープ・ドッグの声を再現し、テイラー・スウィフトの名前も出しつつケンドリックを攻撃。後にこの曲は、2パックの団体から要請された権利の問題でInstagramとXから消去されることになる。

この間にもリック・ロスの“Champagne Moments”やイェの“Like That (Remix)”など、ドレイクを批判する楽曲がリリースされたことで、多方面的に盛り上がりを見せていった今回のビーフだが、シングルを2連続でリリースしたドレイクに対して、ケンドリックも応酬を重ねる。

4月30日、ケンドリックが、ドレイクが製作総指揮を務めたTVシリーズに掛けたシングル“euphoria”をリリース。6分に及ぶ尺で、複数回のビートスイッチが行われる本楽曲は、垂れ流すような落ち着いたラップから、ハイトーンで跳ね上がるようなフロウまで、テンションの抑揚に富んだ作品で、〈お前がNワードを言うのをもう聞きたくない〉など踏み込んだ直接的な言葉でドレイクを批判している。ここからケンドリック対ドレイクの怒涛のリリース合戦が始まった。

5月3日、続けてケンドリックが、ドレイクの“8AM In Charlotte”に掛けたシングル“6:16 In LA”をリリース。同日にドレイクが、7分に及ぶ楽曲“Family Matters”をリリースし、さらにその20分後、ケンドリックが楽曲“meet the grahams”をリリース。1日の間のやり取りとは思えないスピード感は、注視するファンを惑わせた。 

さらに翌日、ケンドリックが楽曲“Not Like Us”をリリース。ドレイクのトロントの自宅の俯瞰写真に性犯罪者のマーカーを付けた攻撃的なジャケットと、彼を小児性愛者だと糾弾したリリックが話題になった。さらにその翌日、ドレイクが楽曲“The Heart Part 6”をリリースし反論。このタイトルは2022年にケンドリックが発表したシングル“The Heart Part 5”に、引っ掛けたものだと思われる。