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正統性を重んじるハリウッドの潮流

 コンピュータの力を借りれば霞から作品を作れる昨今、ハリウッドではあえて正統性にこだわる傾向が強まっている。作品の背景や性質と、制作陣や俳優の出自やセクシャル・オリエンテーションを吟味して、矛盾がないようにするのだ。本作も例外ではない。制作はブラッド・ピットが率いるプランB・エンターテインメント。近年では、19世紀の黒人奴隷問題を扱った「それでも夜は明ける」(2013年)や、入植した韓国系家族の葛藤を描いた「ミナリ」(2020年)など娯楽と社会的意義を両立させた作品が目立つ。レゲエとセットでジャマイカ文化とラスタファリズムを世界に紹介したボブ・マーリーの一生を改めて紹介する本作も、彼の音楽を楽しみながらその背景を改めて学ぶ好機だ。

 監督は、ウィル・スミスがテニスのウィリアムス姉妹の父を演じた「ドリームプラン」で、アカデミー賞の最優秀作品賞にノミネートされたレイナルド・マーカス・グリーン。複数いるプロデューサーに妻のリタと次女のセデラ、長男のジギー、そのジギーの妻であるオーリーら、マーリー家の人々が名を連ねる。つまり、正統性にこだわったオフィシャルのバイオピックなのだ。主演は、「バービー」でバスケット・ボール・ケンや、「あの夜、マイアミで」でマルコム・Xを演じたキングズリー・ベン=アディル。トリニダード・トバコ系のイギリス人だが、ジャマイカのパトワから、ボブの話し方、身のこなし方まで完全に自分のものにしている。

 総勢100人を超えるボブ・マーリーの子どもや孫は出演していないものの、ジャマイカのレゲエ・コミュニティへの気配りはしっかりしている。たとえば、少年時代のボブを演じるのは、ダンスホールのスーパースター、ショーン・ポールの従兄弟、クァン・ダジャイ・ヘンリケスである。ウェイラーズのアストン“ファミリーマン“バレットと、ギターのジュニア・マーヴィン役はそれぞれミュージシャンでもある息子たちが演じている。これは、「ストレイト・アウタ・コンプトン」(2015年)や「ノトーリアス B.I.G.」(2009年)で、息子たちが父のアイス・キューブやノトーリアスBIGを演じた流れと足並みが揃っている。アイ・スリーのマーシャ・グリフィスはナオミ・コーワン、ジュディ・モワットはセヴァナと、現役のレゲエ・シンガーが登場するのも、レゲエ・ファンとしてはうれしい。