
変化への柔軟さ
その間にジョンはマネージメントら周囲のスタッフを入れ替えてみずから代表となり、相互の意見の相違などを解決して92年の5作目『Keep The Faith』からふたたびバンドを動かしはじめる。多くの80年代スターにとって90年代は厳しいものになったが、デビュー10周年の94年にはバラード“Always”がキャリア屈指のヒットとなり、いわゆるハード・ロックの流れに収まらないバンドの新生面を打ち出した。同年にはアレックがバンドを脱退するも、ベースの後任としては先述のヒュー・マクドナルドをサポートに迎えて活動を継続していく。
以降はジョンが求心力を高めながらバンドを牽引し、00年代半ばからは売れっ子プロデューサーのジョン・シャンクスが共同制作を務めるようにもなって、その安定感はいよいよ磐石なものとなった。健康問題から一時休養したこともあったリッチーが2013年にバンドを離脱したことは、大きな危機だったに違いないし、ファンには寂しい報告だったはずだが、80年代の再現を望むのでもなければ、ジョン・シャンクスらと新たに形成してきたコンテンポラリーなボン・ジョヴィの新王道スタイルに大きな変化がもたらされることはなく、ライヴ・サポートを務めたフィル・X(ギター)が2016年から新加入し、そのタイミングでヒュー・マクドナルドも正式メンバーに昇格。

そして、このたびのニュー・アルバム『Forever』のタイミングから、プロデューサーのジョン・シャンクスとサポート・メンバーのエヴァレット・ブラッドリー(パーカッション)も正式メンバーに加えた7人組となっている。こうした柔軟な変化は、音楽シーンのさまざまな変化を勝ち抜いてきたボン・ジョヴィとジョンの長寿ぶりを象徴する出来事になるのかもしれないし、さらなる変化に可能性の余地を残しているとも言える。文字通りの“Legendary”な存在は本当に『Forever』なのかもしれない。 *轟ひろみ
左から、94年のベスト盤『Cross Road』、2001年のライヴ盤『One Wild Night Live 1985–2001』、2003年のアコースティック盤『This Left Feels Right』、2010年のベスト盤『Greatest Hits』、2012年のライヴ盤『Inside Out』(すべてMercury)、2016年のライヴ盤『This House Is Not For Sale: Live From The London Palladium』(Island)