ジャズピアニスト、そして熱いメタラーである西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、酷暑が続く今夏、西山さんが再考したボン・ジョヴィの全盛期と現在について。 *Mikiki編集部
今年は本当に暑い夏ですね。そろそろ暑さも落ち着くかしらという時期ですが、まだ暑い……。
この気温の中、サマソニをはじめ沢山のライブがあり、参加された皆さん本当にすごい。勇者です。
〈暑い夏にはメタル!〉ということで、以前こちらの連載でも、暑い夏=ブラジル音楽=セパルトゥラ&アングラという記事を書きました。
これを書いた2018年より、もっと暑くなってるんじゃないかしら?! ちょっともう〈涼しげな音楽を〉とか言ってられないぐらいの気温なので、ここまでの暑さには、スレイヤー“Angel Of Death”とか、メタリカ“Whiplash”、メシュガー“Bleed”などを聴いて、暑さに向かってむしろ狂いにいく方がいいかもですよ。皆さん、メタルを聴きましょう!
さて、私はこの8月は、ボン・ジョヴィを久々に聴き返していました。なぜかって? 〈盆ジョヴィ〉が復活したということで、流れてきた動画を見ていたら聴きたくなったんですよ。
今年は一応制限がなくなったということで、花火大会や夏祭りも戻ってきましたが、盆ジョヴィも帰ってきた! 盆ジョヴィとは、盆踊りになぜかボン・ジョヴィの“Livin’ On A Prayer”を使って盆踊りをするやつです。
違和感を乗り越えた奇祭。なんだかとてもハッピーな光景です。異国の地で、アーティストが思ってもみなかった使われ方をして、皆が盛り上がっているんですものね。
私と同世代のメタラーにはよくあることだと思いますが、私の洋楽ロックの入り口は、ボン・ジョヴィとクイーンでした。
何かの雑誌でB’zのインタビューを読んでいたら、〈ボン・ジョヴィ、クイーン、セックス・ピストルズに影響を受けた〉というような内容が書いてあって、じゃあ聴いてみたいなと、TSUTAYAで借りてみたのがきっかけです。
ボン・ジョヴィは聴いたことあるし格好良いと思いました。クイーンは複雑に構築されていて格好良いと思いました。セックス・ピストルズはよくわからなくて全くハマらなかった。(やはり昔からパンクは自分は肌に合わなかったみたい!)
ということで、ここからボン・ジョヴィを聴いていくことになります。(ちなみに、洋楽を聴く前に好きでテレビにかじりついて見ていたのは、B’zと聖飢魔II)
ちょうどその頃、ボン・ジョヴィはベストアルバム『Cross Road』(94年)をリリースした時。これが、ボン・ジョヴィの良いところばかりをまとめて聴ける素晴らしいベスト盤で、この入門盤の存在はとても大きかった。これがあったから、ハマれたのだと思います。当時、全員が持っていたのではないかと思うぐらい、周りの友人皆が持っていた記憶があるのですが、どうでしょう。その後、『These Days』(95年)もかなり売れましたよね。
当時私は中学生か高校生で、もちろんお小遣いは限界があったので、自転車でTSUTAYAに行き、まとめて5枚レンタルして、カセットにダビングして当日返却しに行く、という形でロックからメタルまでを聴いていたのですが、カセットは全部捨てちゃったのですけど、『Cross Road』と『These Days』のCDは実家に大事に置いたまま。
今月実家に帰った時に、引っ張り出して聴いていました。ライナーノーツはもちろんMASA ITO!
ついでに、初期の作品、『夜明けのランナウェイ(Bon Jovi)』(84年)、『7800° Fahrenheit』(85年)、『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(Slippery When Wet)』(86年)も、この夏聴いていました。盆ジョヴィのおかげで、何周かまわってボン・ジョヴィに戻って聴いているの、なんだかそれ自体がとてもハッピーなことで、中高生の時の洋楽を聴き出した好奇心いっぱいの自分を、温かい目で見ている気分になりますね!