ジャズピアニスト、そして熱いメタラーである西山瞳さんによるメタル連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉。今回は、酷暑が続く今夏、西山さんが再考したボン・ジョヴィの全盛期と現在について。 *Mikiki編集部

★連載〈西山瞳の鋼鉄のジャズ女〉の記事一覧はこちら


 

今年は本当に暑い夏ですね。そろそろ暑さも落ち着くかしらという時期ですが、まだ暑い……。

この気温の中、サマソニをはじめ沢山のライブがあり、参加された皆さん本当にすごい。勇者です。

〈暑い夏にはメタル!〉ということで、以前こちらの連載でも、暑い夏=ブラジル音楽=セパルトゥラ&アングラという記事を書きました。

これを書いた2018年より、もっと暑くなってるんじゃないかしら?! ちょっともう〈涼しげな音楽を〉とか言ってられないぐらいの気温なので、ここまでの暑さには、スレイヤー“Angel Of Death”とか、メタリカ“Whiplash”、メシュガー“Bleed”などを聴いて、暑さに向かってむしろ狂いにいく方がいいかもですよ。皆さん、メタルを聴きましょう!

スレイヤーの86年作『Reign In Blood』収録曲“Angel Of Death”

メタリカの83年作『Kill ’Em All』収録曲“Whiplash” 

メシュガーの2008年作『obZen』収録曲“Bleed”

 

さて、私はこの8月は、ボン・ジョヴィを久々に聴き返していました。なぜかって? 〈盆ジョヴィ〉が復活したということで、流れてきた動画を見ていたら聴きたくなったんですよ。

今年は一応制限がなくなったということで、花火大会や夏祭りも戻ってきましたが、盆ジョヴィも帰ってきた! 盆ジョヴィとは、盆踊りになぜかボン・ジョヴィの“Livin’ On A Prayer”を使って盆踊りをするやつです。

2023年8月5、6日に開催された〈第11回 中野駅前大盆踊り大会〉の様子

違和感を乗り越えた奇祭。なんだかとてもハッピーな光景です。異国の地で、アーティストが思ってもみなかった使われ方をして、皆が盛り上がっているんですものね。

 

私と同世代のメタラーにはよくあることだと思いますが、私の洋楽ロックの入り口は、ボン・ジョヴィとクイーンでした。

何かの雑誌でB’zのインタビューを読んでいたら、〈ボン・ジョヴィ、クイーン、セックス・ピストルズに影響を受けた〉というような内容が書いてあって、じゃあ聴いてみたいなと、TSUTAYAで借りてみたのがきっかけです。

ボン・ジョヴィは聴いたことあるし格好良いと思いました。クイーンは複雑に構築されていて格好良いと思いました。セックス・ピストルズはよくわからなくて全くハマらなかった。(やはり昔からパンクは自分は肌に合わなかったみたい!)

ということで、ここからボン・ジョヴィを聴いていくことになります。(ちなみに、洋楽を聴く前に好きでテレビにかじりついて見ていたのは、B’zと聖飢魔II)

 

ちょうどその頃、ボン・ジョヴィはベストアルバム『Cross Road』(94年)をリリースした時。これが、ボン・ジョヴィの良いところばかりをまとめて聴ける素晴らしいベスト盤で、この入門盤の存在はとても大きかった。これがあったから、ハマれたのだと思います。当時、全員が持っていたのではないかと思うぐらい、周りの友人皆が持っていた記憶があるのですが、どうでしょう。その後、『These Days』(95年)もかなり売れましたよね。

BON JOVI 『Cross Road』 Mercury(1994)

BON JOVI 『These Days』 Mercury(1995)

86年作『Slippery When Wet』収録曲“Livin’ On A Prayer”

86年作『Slippery When Wet』収録曲“You Give Love A Bad Name”

95年作『These Days』収録曲“Something For The Pain”

当時私は中学生か高校生で、もちろんお小遣いは限界があったので、自転車でTSUTAYAに行き、まとめて5枚レンタルして、カセットにダビングして当日返却しに行く、という形でロックからメタルまでを聴いていたのですが、カセットは全部捨てちゃったのですけど、『Cross Road』と『These Days』のCDは実家に大事に置いたまま。

今月実家に帰った時に、引っ張り出して聴いていました。ライナーノーツはもちろんMASA ITO!

ついでに、初期の作品、『夜明けのランナウェイ(Bon Jovi)』(84年)、『7800° Fahrenheit』(85年)、『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(Slippery When Wet)』(86年)も、この夏聴いていました。盆ジョヴィのおかげで、何周かまわってボン・ジョヴィに戻って聴いているの、なんだかそれ自体がとてもハッピーなことで、中高生の時の洋楽を聴き出した好奇心いっぱいの自分を、温かい目で見ている気分になりますね!

BON JOVI 『Bon Jovi』 Mercury(1984)

BON JOVI 『7800° Fahrenheit』 Mercury(1985)

BON JOVI 『Slippery When Wet』 Mercury(1987)

 

今改めてボン・ジョヴィのこの大ヒットアルバムたちを聴くと、よくできているなあと思います。ことごとく歩けるテンポ、愚直なまでの8ビート、サビに大合唱という、ロックに興味がなくても人間のフィジカルに本能的に働きかけるボン・ジョヴィ的クリシェとでも言いましょうか、最初の『夜明けのランナウェイ』からそれがあるので、これこそがボン・ジョヴィのやりたいビジョンだったのだと思います。

84年作『Bon Jovi』収録曲“Runaway”

これらは体に直接作用するので、自然と歩くリズムで体を動かしてしまう。誰にでも開かれている強い音楽だなと、改めて思います。

 

また、〈メタルを聴き始めると、ボン・ジョヴィは少し軟派なものと思って、聴かなくなる〉というのも、我々世代の通る道ではと思います。私もそうで、イングヴェイ・マルムスティーンにハマって以降はほとんど聴かなくなってしまいましたが、しばらくボン・ジョヴィを忘れた時に聴いたのが、『This House Is Not For Sale』(2016年)。そして『2020』(2020年)です。

BON JOVI 『This House Is Not For Sale』 Island/ユニバーサル(2016)

BON JOVI 『2020』 Island/ユニバーサル(2020)

近作は非常に自覚的に社会問題に向き合い、ロックの力で発信しようとしていて、そんなボン・ジョヴィの2000年代以降を知らなかった私は、〈え、めっちゃかっこいいやん〉と思いました。

2020年作『2020』収録曲“Limitless”

近作は、良い意味で老いとともにある音楽で、HR/HMだとよく〈声が出なくなった〉や〈衰えた〉など言われることがありますが、ずっと同じだったら、普通おかしいですよ。

私がジャズをやっているからというのもありますが、年齢とともに身体と向き合い、深めた思慮との折り合いをつけ、音楽に昇華するのは、年齢を重ねながら音楽をすることの勲章みたいなものだと思っています。ジャズの先輩方には90代の方まで普通にいらっしゃいますが、もうめちゃくちゃ格好良いもの。

ボン・ジョヴィは、良い年齢の重ね方をしていてとても素敵で格好良いなと思います。

 

今回はメタルから少し外れましたが、ボン・ジョヴィ再考の良い機会が盆ジョヴィでした!

 


LIVE INFORMATION
2023年9月1日(金)埼玉・蕨 Our Delight
開場/開演:19:00/19:30 ※2セット、入替なし
出演:西山瞳(ピアノ)/橋爪亮督(テナーサックス)
一般/29歳以下の本業学生/29歳以下の社会人:3,600円/1,100円/2,600円(いずれもドリンク代別)
有料配信あり

2023年9月2日(土)神奈川・横浜 上町63
開演:15:00(1st)/16:30(2nd)
出演:西山瞳(ピアノ)/座小田諒一(ベース)/池長一美(ドラムス)
チャージ/学生:3,300円(ドリンク代別)/2,750円(1ドリンク付/要学生証提示)

2023年9月3日(日)小岩 COCHI
開演:20:00 ※2セット
出演:西山瞳(ピアノ)/馬場孝喜(ギター)
チャージ:2,800円

2023年9月15日(金)京都 Bonds Rosary
開場/開演:18:30/19:30
出演:西山瞳 HIRAKATA TRIO 西山瞳(ピアノ)/鈴木孝紀(クラリネット)/光岡尚紀(ベース)
前売り/当日:3,000円/3,500円(いずれも+2オーダー)

2023年9月16日(土)東京・用賀 工房花屋
開場/開演:
出演:The Tree Of Life 安ヵ川大樹(ベース)/西山瞳(ピアノ)/maiko(バイオリン)
チャージ:4,000円(別途オーダー)

★詳細やその他のライブについては西山瞳のオフィシャルサイトへ

 

RELEASE INFORMATION

西山瞳 『ホームタウン』 MEANTONE(2022)

リリース日 :2022年11月9日(水)
品番:MT-11
価格:2,750円(税込)
紙ジャケット仕様

TRACKLIST
1. Fairy Tale フェアリー・テイル(作曲:西山瞳)
2. Take the “K” Train テイク・ザ・ケー・トレイン(作曲:西山瞳)
3. Yawn ヨーン(作曲:西山瞳)
4. Walking in the Park ウォーキング・イン・ザ・パーク(作曲:西山瞳)
5. 200km 200キロメートル(作曲:西山瞳)
6. HIRAKATA Park West ヒラカタ・パーク・ウェスト(作曲:西山瞳)
7. Our Memorial Attractions アワ・メモリアル・アトラクションズ(作曲:西山瞳)
8. Romance ロマンス(作曲:西山瞳)

録音日:2022年4月18日、奈良 NMG Studio
録音/ミックス/マスタリング:三輪卓也(NMG Studio)
アートディレクション/平岡直樹(yuu)

西山瞳(ピアノ)
鈴木孝紀(クラリネット)
光岡尚紀(ベース)

 


PROFILE: 西山瞳
79年11月17日生まれ。6歳よりクラシックピアノを学び、18歳でジャズに転向。大阪音楽大学短期大学部音楽科音楽専攻ピアノコース・ジャズクラス在学中より、演奏活動を開始する。卒業後、エンリコ・ピエラヌンツィに傾倒。2004年、自主制作アルバム『I’m Missing You』を発表。ヨーロッパジャズファンを中心に話題を呼び、5か月後には全国発売となる。2005年、〈横濱JAZZ PROMENADE ジャズ・コンペティション〉において、自身のトリオでグランプリを受賞。2006年、スウェーデンにて現地ミュージシャンとのトリオでレコーディング、『Cubium』をSpice Of Life(アミューズ)よりリリースし、デビューする。2007年には、日本人リーダーとして初めて〈ストックホルム・ジャズ・フェスティバル〉に招聘され、そのパフォーマンスが翌日現地メディアに取り上げられるなど大好評を得る。以降2枚のスウェーデン録音作品をリリース。2008年に自己のバンドで録音したアルバム『Parallax』では、スイングジャーナル誌日本ジャズ賞にノミネートされる。2010年、〈インターナショナル・ソングライティング・コンペティション〉(アメリカ)で、全世界約15,000のエントリーのなかから自作曲“Unfolding Universe”がジャズ部門で3位を受賞。コンポーザーとして世界的な評価を得た。2011年発表『Music In You』では、タワーレコードのジャズ総合チャートで1位、HMVの総合2位にランクイン。CDジャーナル誌2011年のベストディスクに選出されるなど、芸術作品として重厚な力作であると高い評価を得る。2014年には自身のレギュラートリオ、西山瞳トリオ・パララックス名義での2作目『Shift』を発表。好評を受け、アナログでもリリースする。2015年には、ヘヴィメタルの名曲をカバーしたアルバム『New Heritage Of Real Heavy Metal』をリリース。マーティ・フリードマン(ギター)、キコ・ルーレイロ(ギター)、ヤング・ギター誌などから絶賛コメントを得て、発売前よりメタル・ジャズの両面から話題になり、すべての主要CDショップでランキング1位を獲得。ジャンルを超えたベストセラーとなっている。同作は『II』(2016年)、『III』(2019年)と3部作としてシリーズ化。2019年4月には『extra edition』(2019年)もリリース。自身のプロジェクトの他に、東かおる(ボーカル)とのボーカルプロジェクト、安ヵ川大樹(ベース)とのユニット、ビッグバンドへの作品提供など、幅広く活動。〈横濱JAZZ PROMENADE〉をはじめ、全国のジャズフェスティバルやイベント、ライブハウスなどで演奏。オリジナル曲は、高い作曲能力による緻密な構成とポップさが共存した、ジャンルを超えた独自の音楽を形成し、幅広い音楽ファンから支持されている。