
ルーツをわかりやすい音で示したかった
――プロデューサーにTHE NEATBEATSの眞鍋“Mr.PAN”崇さんを招くことになった理由を教えていただけますか?
マツシマ「眞鍋さんの所有するGrand-Frog Studioは、見たこともない古い機材、眞鍋さんじゃないと扱えないアナログ機材だけを置いているスタジオなんです。僕はそこで録られたTHE BOHEMIANSとかの作品の音が好きで。現代にこんな音まだあったんだ!って思いますよね(笑)。いつか眞鍋さんとレコーディングしたいと思っていて、打診してみたら快く受けてくださいました」
――ちなみに、そういったビンテージサウンドではない最近の音楽となると、どのようなものを聴きますか?
城戸「私はいろいろ聴いています。Jay Parkや彼の設立したレーベル、AOMGの作品とか、韓国のヒップホップも好きですね。韓国語とラップって相性がすごくいいんですよ。あとはSoundCloudで電子音楽をディグしたり」
――なぜそのような質問をしたのかというと、暴動クラブはオールドスクールなロックンロール、パンクやガレージロックといった荒々しいバンドサウンドのイメージが強いからです。しかし、釘屋さんとマツシマさんは過去のインタビューでダブやニューウェーブといったジャンルにも言及されていますし、城戸さんはご自身の連載でさまざまな音楽を紹介されています。そう考えると、アルバムではプロダクションにおける時計の針を進め、音楽性の幅を広げる選択肢もあったんじゃないかと。それに対して、アナログ機材による録音を選び、それにともなって音楽性もよりタイトにしたのはなぜですか?
城戸「今回のアルバムを作るにあたって、ロックンロールの範疇を越えて多彩なサウンドを展開する、という選択肢はなかったですね」
釘屋「この先の暴動クラブの音楽性がどう変化していくのかはわかりませんが、僕は新しい音楽でもルーツと文脈を感じられるものが好きなんですね。だから、この1stアルバムでは自分たちのルーツを、わかりやすい音でわかりやすく示したかった。
ボ・ディドリーが原曲で、ザ・プリティ・シングスのバージョンをもとにした“ROAD RUNNER”のカバーを入れたのもそういう理由で。ロックンロールのスタンダードと言えるいろんなアーティストがカバーしている曲で、アレンジできる余白があって、〈これが暴動クラブです〉って自分たちの個性を出すのにぴったりなんですよね」
城戸「そうなると、眞鍋さんのスタジオで録るのがベストだと思いました」
釘屋「そしてほかの曲も、眞鍋さんのスタジオを使って50年代や60年代のやり方でレコーディングできるんだったら、コード進行や歌、構成の面で、オレたちのレパートリーの中でも特にシンプルな曲を選んで収録したいねって。メンバー間でそういう話をしたうえで完成させたアルバムです」
――“ROAD RUNNER”に加えて、THE ROOSTERSの“C.M.C.”もカバーしていますね。
釘屋「全員弾けるし歌える曲だったんです。で、やってみたらいい感じにハマったんですよね」
城戸「私はめちゃ乗り気でした(笑)。あんな素晴らしい曲をやってもいいのか、というおこがましさは感じてましたが」

オレらが好きなロックンロールの音だ!
――眞鍋さんとの現場はいかがでしたか?
マツシマ「しごかれましたね(笑)」
釘屋&鈴木「タバコが吸えてよかったです(笑)」
マツシマ「そこね(笑)。とりあえず自分たちでバーンって演奏してみて、それを聴いて〈なんか違うな〉とか〈もっとこうならないいかな〉と悩んでいたら、眞鍋さんが具体的なやり方を教えてくださるんです。あらゆる指摘が的確かつプラスアルファのことも言ってくださるので、すべてのパートに対してそれができるのはすごいなと。眞鍋さんは現役のギタリストで、説得力がありますしね」
城戸「レコーディングに向けての楽器の練習方法、リスニングを意識したテンポ感や強弱の付け方も教えてくださいました。アナログテープの一発録りだから、後からできることも限られてくるんです。なので録音はハードだったけど、やってよかったです。結果、良くも悪くも今の4人でできることが、ぜんぶ生々しく出たんじゃないかと思います」
釘屋「経験値をもらえました。眞鍋塾だった(笑)」
鈴木「個人のプレイやバンドとしての技術がどうかということではない、そういうのを超えた圧倒的な手応えがありました」
マツシマ「今回は楽器にマイクを近づけて録音する、よくあるやり方ではなくて、オフマイクで録ったんです。そうすると、眞鍋さんのセッティングの妙もあって、楽器とマイクの間に空気の層が生まれるというか。録ったものにリバーブをガンガンにかけるのではなくて、録れた音自体の立体感が桁違いで、〈オレらが好きなロックンロールの音だ!〉とびっくりしました」
城戸「今までは現行のAmpegのアンプを使って、よくあるレコーディング方法で録っていましたが、それが嫌ではなかったんです。けど、今回は〈これだ!〉っていう確信が得られたので、音の面での満足感はほんとうに桁違いでしたね」