小西康陽の自由な解釈が聴ける“DOLLS’ POLYPHONY”
映画「AKIRA」の音楽が従来の劇伴と異なる点、もう1つが〈音楽そのものが放つ自由度の高さ〉だ。芸能山城組は、映像作品における演出の一部としてのBGMではなく、音そのもので「AKIRA」を表現したのだ。ストーリーと共振しながら、音楽自体は圧倒的な強度を持って単体でも成立する。芸能山城組の特性を生かしたサウンドメイクをアニメーションに組み込むこと自体、当時はかなりセンセーショナルなアクションだったのではないだろうか。
個人的に、そうした側面を強く感じられたのが“DOLLS’ POLYPHONY [ぬいぐるみのポリフォニー]”だ。劇中、島鉄雄が悪夢の中でくまのぬいぐるみ(ナイト・ベア)に襲われるシーンで流れる同曲を、その奇奇怪怪な映像とともに思い出す人も多いはず。
そんな“DOLLS’ POLYPHONY [ぬいぐるみのポリフォニー]”を久保田、そして小西康陽がリミックスした音源が『AKIRA REMIX』には収録されている。スロージャムなビートが付与された久保田のリミックスは、90年代のR&Bを彷彿とさせる斬新な解釈が特徴。片や小西のバージョンはシェイカー、鳥のさえずり、雷鳴といった要素が追加され、両者とも自らの特徴をふんだんに織り交ぜることで、その手腕を発揮している。
その他、一聴して小西による仕事だとわかる“REQUIEM [未未]”や、不穏な音の成分を加えて大きく生まれ変わった蓜島の“ILLUSION [回想]”など、『AKIRA REMIX』を聴くことで「AKIRA」という作品のさらなる可能性を見出すことができるだろう。
『AKIRA REMIX』を経た「AKIRA」の音楽
架空とはいえ2019年の世界を描いた「AKIRA」。その内容はもちろんフィクションだが、大友が描いた非現実が現実を侵食していく光景を、私たちは東京2020オリンピック(新型コロナウイルスの影響により延期。開催は2021年)の際に目の当たりにした。時に人の想像は、未来を創造する――映画「AKIRA」と芸能山城組の音楽、そして『AKIRA REMIX』をすべて体感した人たちが、この先どんな未来を作り上げていくのか、とても楽しみだ。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2024年8月21日(水)
品番:VICL-65922~23(2枚組)
価格:4,400円(税込)
TRACKLIST
DISC 1
1. KANEDA [金田]
2. BATTLE AGAINST CLOWN [クラウンとの闘い]
3. WINDS OVER THE NEO-TOKYO [ネオ東京上空の風]
4. DOLLS’ POLYPHONY [ぬいぐるみのポリフォニー]
5. EXODUS FROM THE UNDERGROUND FORTRESS [ケイと金田の脱出]
6. ILLUSION [回想]
7. MUTATION [変容]
8. REQUIEM part1 [未来 part1]
9. TETSUO [鉄雄]
10. SHOHMYOH [唱名]
11. REQUIEM part2 [未来 part2]
<ボーナス・トラック>
12. SHOHMYOH2 [唱名2]
13. TETSUO2 [鉄雄2]
DISC 2
1. WINDS OVER THE NEO-TOKYO [ネオ東京上空の風]
2. DOLLS’ POLYPHONY [ぬいぐるみのポリフォニー]
3. REQUIEM [未来]
4. KANEDA [金田]
5. SHOHMYOH [唱名]
6. ILLUSION [回想]
作詞・作曲:山城祥二
演奏:芸能山城組
DISC 1
Remixed by 久保田麻琴
DISC 2
1,2,3 : Remixed by 小西康陽
4,5,6 : Remixed by 蓜島邦明
■作品クレジット
DISC 1
Remixed, programmed, recorded and mastered by 久保田麻琴
Guitar on track 1:水谷孝
by courtesy of The Last One Musique
Drums on track 5:伊藤大地
MK thanks to 高橋亮(メディア・インテグレーション)
DISC 2
track 1~3
Remixed by 小西康陽
Programming:福富幸宏
Drums, Pandeiro:柿澤龍介
Recorded & Mixed by 廣瀬修
Assistant Engineer:荒谷莉子、粕川鈴(MIT STUDIO)
Recorded & Mixed at prime sound studio form Daikanyama, STUDIO MECH, MONOGRAM SOUNDS, MIT STUDIO
Coordinator:山崎弘崇(readymade entertainment inc.)、白石成識(STYRISM INC.)
track 4~6
Remixed by 蓜島邦明
Mixed by 村瀬範恭
PROFILE: 久保田麻琴
1970年代より裸のラリーズなど、いくつかのバンドで活動。多くのアーティストのプロデュースを行う他、阿波踊りなど民謡の録音/音源制作も行う。宮古島の古謡を題材とした映画「スケッチ・オブ・ミャーク」では原案・出演を務め、同作はロカルノ国際映画祭に招待され高評価を受ける。大友克洋の短編アニメ「火要鎮」の音楽も担当。
公式サイト:https://www.makotokubota.org/
PROFILE: 小西康陽
1959年、北海道札幌生まれ。作編曲家。
1985年にPIZZICATO FIVEのメンバーとしてデビュー。
解散後も、数多くのアーティストの作詞/作曲/編曲/プロデュースを手掛ける。
READYMADE JOURNAL:https://www.readymade.co.jp/journal/
PROFILE: 蓜島邦明
提供した楽曲数は数千曲にのぼり、そのジャンルはCM、テレビドラマ、ゲームソフト、アニメ作品、映画、美術館のテーマ曲やバレエ楽曲と多岐にわたる。
代表作として「世にも奇妙な物語」「NIGHT HEAD」「クーロンズ・ゲート」「スプリガン」「MONSTER」「MASTERキートン」「ウルトラマンマックス」「蟲師」「仮面ライダーアマゾンズ」
配島邦明 公式サイト:http://www.haishima.ne.jp/
PROFILE: 芸能山城組
芸能山城組は、芸能集団である以前に、遺伝子DNAに約束された人類本来のライフスタイルを模索し検証しようとする実験集団であり、〈行動する文明批判〉の一拠点です。そのあゆみは、1968年、前身の〈ハトの会コーラス〉によるブルガリア女声合唱の実現に始まります。続いてジョージアの男声合唱、バリ島のケチャなどの上演に成功し、世界初のマルチミュージカリティを実現しつつ、1974年、山城祥二を組頭として芸能山城組を創立しました。アマチュアの立場を堅持しながら世界諸民族の80系統に及ぶパフォーマンスを上演してきた実績、そしてそれらを糧として展開する伝統と現代とを融合した創造活動は、世界に例を見ません。
しかし、これらのアクティビティは、西欧近現代に対する実践的文明批判の一側面にすぎません。伝統的共同体の叡智に学び、専門化、単機能化を排した地道で真摯な〈群れ創り〉〈ひと創り〉こそが、マルチパフォーマンスコミュニティ山城組の真骨頂です。
山城組の文明批判の大きな特徴は、その対象とする西欧文明の最大の武器である科学技術を貪欲に摂取し、自家薬籠中のものとして、西欧近現代それ自体の攻略に活用するところにあります。教育者、ジャーナリスト、エンジニアそして学生と多彩なメンバーの中で、生命科学、脳科学、数理科学、心理学、情報工学などの諸分野で博士号をもつものが現在13名を数えます。これらの強力な文明科学研究を率いているのも、組頭・山城祥二こと科学者・大橋力です。
時代を先取りする一連の創作活動も、そうした比類ない活性の具体的なあらわれのひとつといえます。『交響組曲AKIRA』も、芸能山城組が西欧近現代に向けて放つ文明批判の鮮烈なメッセージに他なりません。
公式サイト:https://www.yamashirogumi.gr.jp/
