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本質は何も変わっていない

 前述した毀誉褒貶の〈褒貶〉の理由の多くは、レコーディングで大きな役割を果たしたシンセの音色なのだが、ポリスもヴァン・ヘイレンもシンセを導入した時代だ。常に新しいことに挑戦しているミュージシャンならトレンドのサウンドにアプローチしてみたいという興味を持つのは当然のことだと思うし、それまでのストリート・ロックからの脱却というイメージ戦略にシンセの煌びやかな音色はぴったりだと考えたのかもしれない。

 ともあれ、曲そのものに目を向けてみると、もともとはドナ・サマーに提供するつもりだったというファンキーな“Cover Me”、クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルやローリング・ストーンズを思わせるロックンロールの“Darlington County”、ロカビリーの“Working On The Highway”、ジョニー・キャッシュへのオマージュとも言える“I’m On Fire”と前半は本人のルーツを窺わせる曲が並ぶ。後半は “No Surrender”をはじめ、彼らしいロックンロールを畳み掛ける。そして、“Dancing In The Dark”から、変わり果てた故郷へのレイクエイム的なフォーク“My Hometown"に繋げ、『Born In The U.S.A.』は静かに幕を閉じる。

 巷間で言われるように音楽的には華やかなものにはなったものの、スプリングスティーンの本質は何ら変わっていないように思うが、どうだろう。リリース40周年を機に改めてじっくりと耳を傾け、『Born In The U.S.A.』の真価をぜひ判断してみてはいかがだろうか。

 ちなみに40周年記念の日本盤には、85年4月に実現した初来日公演のライヴやオフショットほか未発表写真満載のフォトブックに加え、85年8月22日のニュージャージー公演の全29曲を収録した3枚のCDが付く。大歓声で迎えられる“Born In the U.S.A.”をはじめ、新曲を堂々と鳴らすエネルギッシュなパフォーマンスからは、自身のキャリアが大きな波に乗ったことに昂揚するスプリングスティーンの姿が見えるようだ。

ブルース・スプリングスティーンの作品。
左から、82年作『Nebraska』、87年作『Tunnel of Love』(共にColumbia)、日本独自企画のベスト盤『Japanese Singles Collection -Greatest Hits-』(ソニー)

ブルース・スプリングスティーンの近作と参加作。
左から、2020年作『Letter To You』、2022年作『Only The Strong Survive』(共にColumbia)、最新ベスト盤『Best Of Bruce Springsteen』(Legacy)、トム・モレロの2021年作『The Atlas Underground Fire』(Mom+Pop)、ジョン・メレンキャンプの2022年作『Strictly A One-Eyed Jack』(Republic)