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UNISON SQUARE GARDENしかありえない「ブルーロック」とコラボした3曲

では、改めてニューシングル『傍若のカリスマ』を紐解いていこう。TVアニメ「ブルーロック」のコラボレーション曲で、今回が3曲目だ。

コラボ1曲目となった“カオスが極まる”は第1期オープニング主題歌。曲が始まった瞬間にテンションは頂点に達し、圧倒的なスピード感で駆け抜けたと思ったら、こちらの予想を超えた展開を取り入れながら、〈ぶちかましてくれ/見たことがなけりゃないほどドラマティックだ〉というサビのラインに突入していく。呆気に取られるほど強烈なソングライティング/サウンドメイクは、このバンドの新たな到達点と言っていいだろう。

コラボ2曲目の“Numbness like a ginger”(第1期第2クールエンディング主題歌)は、軽快なギターカッティングに導かれるポップチューン。ジャジーなピアノのフレーズも加えられ、洗練されたアンサンブルを堪能できる。勝負に敗れた人への優しい視線が感じられる歌詞も印象的だ。

そして3曲目となる今作の“傍若のカリスマ”は、爆発的な推進力をたたえたドラムのビート、鋭利に研ぎ澄まされたギターフレーズ、濃密なグルーヴを放つベースラインから始まる。“カオスが極まる”のイメージを(おそらくは意図的に)反映させつつ、さらなるバージョンアップを感じさせるアンサンブルへと昇華させているのだ。ジェットコースターのようにアップダウンを繰り返すメロディライン、そして、〈どこまでものめり込め お前が挑んだゲームだ〉という歌詞も強烈。「ブルーロック」のストーリーや世界観を色濃く感じさせながら、徹頭徹尾〈UNISON SQUARE GARDENでしかありえない〉楽曲へと結実している。

 

「ブルーロック」とバンドに共通するエゴと信頼

〈こんなにぶっ飛んだ曲、キャリア20年のバンドがやることじゃねえよ〉と思ってしまうほどにカッコいい“傍若のカリスマ”。この曲の核にあるのは、「ブルーロック」の大きなテーマでもある〈エゴ〉だろう。

世界一のストライカーを養成するための施設〈青い監獄〉を舞台にした「ブルーロック」。サッカーは集団で行うチームスポーツだが、特に得点に絡む場面では、選手ひとりひとりの判断によって勝負が決することも多い。基本的には団体で行うのだが、ときには自分のエゴを剥き出しにしなくてはいけない――そのアンビバレントな在り方は、ロックバンドとよく似ている。

UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介(ボーカル/ギター)、田淵智也(ベース/コーラス)、鈴木貴雄(ドラムス/コーラス)はそれぞれが優れたミュージシャンであり、際立った個性を持っている。(これは筆者の想像だが)プライドもあるだろうし、譲れない部分もあるだろう。しかもUNISON SQUARE GARDENの楽曲の多くは、(“傍若のカリスマ”もそうだが)演奏するためには高いテクニックが必要だし、特にライブ中は極限の集中力が求められるので一瞬も気を抜けない。そう、3人の技術と気合いが一つになることで生まれるテンションこそが、このバンドの軸なのだ。

その根底にあるのはもちろん、メンバー同士の信頼だ。それぞれの力量を信じ、互いの音をぶつけることで、バンドとのアンサンブルを創り上げて磨き上げていく。それを繰り返すことで彼らは、現在の音楽性を築き、多くの音楽ファンの支持を得てきた。その現時点における最高到達点が“傍若のカリスマ”なのだと思う。

シングルのカップリング曲“憂鬱はプリンセス”にも、このバンドでしかありえない化学反応が起こりまくっている。グランジロックを想起させる不穏なサウンドで始まるのだが、サビでいきなり――黒い雲が一瞬で飛び散るように――ポップで開放的なメロディが鳴り響く。この極端なアレンジを可能にしているのはもちろん、メンバー3人のプレイアビリティの賜物。〈私と世界どっちが大事なのよ〉というフレーズが描き出す〈極端さ〉と〈リアルさ〉のバランスも素晴らしい。