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中南米の音に惹かれて

 その一方で、明らかにバンド時代とは異なる表情もたくさんある。なかでも特筆したいのは、サルサやジョイス・クーリングあたりのブラジリアン・フュージョンに通じるサウンドが前面に出ていることだ。グリープはここ数年、エクトル・ラボーやセリア・クルスなどのサルサ、ブラジルのシンガーであるミルトン・ナシメントといった中南米の音楽を多く聴いていたという。その嗜好をもっとも顕著に表した曲のひとつが“Terra”だ。ブラジルの打楽器パンデイロが使われ、コンガやカウベルといったパーカッションがグルーヴを牽引するさまはサルサを思わせる。また“The New Sound”もグリープの嗜好が濃厚だ。こちらはポリリズム全開の性急なグルーヴと速いBPMが特徴のラテン・ジャズといった趣で、現在の志向性とバンド時代のマス・ロック的な要素が混在している。そういう意味では、タイトル通りグリープの新たな姿を見せてくれる作品でありながら、過去の曲群と地続きで楽しめるサウンドも多い。ゆえにキング・クリムゾンやラッシュといったマス・ロックに影響を与えたバンドの香りを見い出せなくもない。しかし、それ以上に筆者の耳をとらえたのは、エディ・パルミエリ『The Sun Of Latin Music』(74年)などクラシカルなラテン・ジャズのエッセンスだ。おそらく、ゴージャスなアレンジが映えるビッグバンドの演奏にも聴こえるからだろう。あるいは、本作のレコーディングをするため、ブラジルでセッションを行った際に20人近くのミュージシャンと仕事をした影響だろうか。いずれにせよ、ブラック・ミディ時代よりもさらに奔放で、スケールの大きさを感じさせる。これはバンドという、ある程度の定型が発生してしまう構成では表現しづらいものだ。こうした側面は、ソロになったからこそ前面に出たと言えるかもしれない。