本日1月30日、ミュージシャンのソフィー(SOPHIE)が亡くなった。

ソフィーことソフィー・ジオン(Sophie Xeon)は、86年、スコットランド・グラスゴー生まれで、米LAを拠点に活動していた音楽家。彼女の死は、英ガーディアン紙MixmagNMEClash Magazineなど、英国の複数のメディアが伝えている。ソフィーのチームによると、30日の午前4時頃、ギリシャ・アテネの自宅付近で不慮の事故によって亡くなったという。34歳だった。

ソフィーは、2013年に設立されたA. G.クック(A. G. Cook)によるレーベル〈PC Music〉周辺のプロデューサーとして知られるようになり、同年にシングル“Nothing More To Say”でソロ・デビューしている。その後、グラスゴーのクラブ・ミュージック・レーベル〈Numbers〉からの一連のシングルで高い評価を得た(それらは2015年にコンピレーション・アルバム『PRODUCT』へまとめられた)。

2018年のファースト・アルバム『OIL OF EVERY PEARL’S UN-INSIDES』では自身のヴォーカルをフィーチャーし、先鋭的なプロダクションでトランス女性(2017年にカミングアウト)としてのアイデンティティーを表現。そのサウンドやテーマ性などが高く評価された同作は、第61回グラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニック・アルバム賞にノミネートされている。

ソフィーは多くのプロデュース・ワークやコラボレーションでも知られている。チャーリーXCXをはじめ、カシミア・キャット、キム・ペトラス、マドンナ、ムー、ヴィンス・ステイプルズ、レッツ・イート・グランマ、ITZY、ガイカ、シャイガール、アルカ……と彼女が協働したアーティストは枚挙に暇がない。世代も、性差も、ジャンルも、オーバーグラウンド/アンダーグラウンドとの間にある壁も飛び越え、その唯一無二の音が求められた音楽家だった。

日本のアーティストとの関わりも深い。2014年にはDazed & Confused(現Dazed)できゃりーぱみゅぱみゅと対談した(記事には〈ソフィーはきゃりーのための曲を書いている〉とあるが、結局未発表に終わっている)。また、安室奈美恵の2015年作『_genic』では、“B Who I Want 2 B feat. HATSUNE MIKU”の作詞・作曲・プロデュースを行っている。

懐古主義や過去の音楽の模倣が幅を利かせるようになった21世紀の音楽シーンで、ソフィーはオリジナルで新しい、きわめてフューチャリスティックな未知のサウンドを生み出したアーティストだった。過激なまでにエッジーで、自由で、アバンギャルドでさえある彼女の音楽は、しかしどこまでもポップで親しみやすいものだった。

今月、ソフィーのアイドルであるオウテカによる“BIPP”のリミックスが公開された(オウテカの新作『SIGN』の制作の端緒になったと思われる作品である)。さらにそのB面として、ソフィーの未発表曲“UNISIL”もリリースされたばかりだった。その矢先の死に、驚きを隠せない。

まだ見ぬ未来を音で描いてみせた偉大な音楽家、ソフィー。彼女がこれほどの若さで逝ってしまったこと。いまはまだその事実を受け止めきれず、信じられないままだ。

Rest in power SOPHIE.