
先人へのリスペクトが増した、ルーツに向き合ったアルバム
――『Taste of Tears』に話を戻しますと、 “How Near, How Far”は幾多の音楽家がコントラファクトしてきた“How High The Moon”が原曲ですが、まさか“Treat Me Right”で“Fine And Mellow”、“Until Then”で“Left Alone”がコントラファクトされるとは思いませんでした。
「“Treat Me Right”に関しては、ビリー・ホリデイとレスター・ヤングが“Fine And Mellow”を演奏したときの映像に出てくる、レスターのアドリブフレーズにインスピレーションを受けて作曲しました。いわゆるブルースコードとはかなり変わった形になっていると思います。
“Until Then”に関しては、〈ぜひ“Left Alone”をとりあげて欲しい〉という平野さんのリクエストから生まれたものですが、正直、最初は戸惑いました。“Left Alone”はあまりにもメロディとコードが密接に結びついている曲なので、僕の中ではコード進行を聴いただけでメロディが聴こえてきてしまう。最初は〈これは(コントラファクトが)ちょっと無理かもしれないな〉と思いました。でも、元のメロディが頭の中から消えないのは仕方がない。では、その上にさらにもう1つ僕が作ったメロディを乗せて、演奏している側の意識の中でメロディが同時に2つ流れるような感じにできたらいいんじゃないか、と思い直して、書きました」
――アルバム参加メンバーである吉田桂一さん(ピアノ)、上村信さん(ベース)とのトリオで活動を始めたのはいつですか?
「昨年の秋、アケタの店から活動が始まりました。実は僕が学生時代に初めて仕事をした場所がここで、アケタさん(明田川荘之)のバンドや自分のバンドでも演奏していた馴染みの場所なんですが、アメリカから戻ってからは出演していなかったんです。昨年アケタさんに久しぶりに会いに行ったことがきっかけで再びアケタの店に出ることになって、それならば僕にとって昔からの大事な付き合いのあるミュージシャンと演奏したいということで、このトリオになりました。
吉田くんとは、僕が大学を卒業してすぐの頃に知り合いました。日本で、日本人として生活しながら一貫して〈ジャズ〉を続けてきたピアニストです。なんといってもスタンダードへの造詣が深いから、安心して任せられる。今回の企画に打って付けのプレイヤーだと思いました。
上村くんとは、僕がアメリカから帰ってきた1995年頃に知り合って、その頃から一緒に演奏しています。僕にはとても大切な同世代のベーシストが3人いたんですが、俵山昌之と嶋友行が亡くなってしまい、上村信が最後のひとりなんです。この機会に、ぜひ上村くんと作品を残したいという気持ちがありました。吉田くんも上村くんも、細かいことを言ったり考えたりしなくていい。こちらから指示を出す必要がないし、何か言えばきちんと汲み取ってくれます」

――ライブハウスでもコンサートホールでもスタジオでもない、岡本太郎のアトリエでの収録ということに関しては?
「サックス奏者としてはすごく演奏しやすいですね。響きすぎることもなく、狭すぎることもなく、独特な空間です。岡本太郎さんのアトリエで演奏できるという嬉しさもあって、おそらく音楽をいい方向に向かわせていると思います」
――かつて池田さんはオリジナル曲で構成された『Free Bird』を「私の考える最もジャズらしいジャズ」、『OUR STORIES』を「私らしいジャズアルバム」と紹介なさっていましたが、今回の『Taste of Tears』を一言で形容すると、どうなりますでしょうか?
「〈自分のルーツに向き合った一作〉という感じでしょうか。このアルバムをきっかけに、もっとスタンダードを勉強したい、演奏したいと思うようになりましたし、スタンダードを作った先人たちへのリスペクトがさらに増したような気がします」
RELEASE INFORMATION

リリース日:2024年12月19日(木)
品番:DOD-049
価格:2,750円(税込)
TRACKLIST
1. Tipsy
2. Treat Me Right
3. How Near, How Far
4. Taste of Tears
5. Revol
6. And Then One Day
7. Street
8. I Know Are What You Are
9. Until Then
10. A Moon Above Me
11. The Summer’s Gone
(2024年5月28日 東京収録)
■演奏者
池田篤 Atsushi Ikeda: alto saxophone
吉田桂一 Keiichi Yoshida: piano
上村信 Shin Kamimura: bass
LIVE INFORMATION
2024年12月19日(木)東京・西荻窪 アケタの店
2025年1月26日(日)東京・阿佐ヶ谷 鈍我楽
2025年1月29日(水)神奈川・茅ヶ崎 Storyville
2025年3月13日(木)東京・吉祥寺 Sometime
2025年3月14日(金)静岡・藤枝 Body & Soul
2025年3月15日(土)三重・四日市 Vee Jay
2025年3月16日(日)愛知・名古屋 The Wiz
PROFILE: 池田 篤
1963年、横浜生まれ。国立音楽大学器楽科卒。在学中より山下洋輔(ピアノ)のグループなどに参加し、1985年、にビッグバンド・コンテストで優秀ソリスト賞を受賞。1990年に渡米し、マーカス・ベルグレイヴ(トランペット)との共演を通じて多大な影響を受けた。95年帰国後、辛島文雄(ピアノ)Quintet、ジェイ・トーマス(トランペット)、小濱安浩(テナーサックス)とのThe East West Alliance、原大力Trio、CUG Jazz Orchestra、小曽根真 & No Name Hoses、山下洋輔 Special Big Bandなどで活動。著作に「The Jazz道 1~3」。国立音楽大学ジャズ専修教授。
■Days of Delight
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オフィシャルサイト:https://www.dod-jp.com/