COLUMN

Uyama Hiroto 『freedom of the son』

生命のように脈動するビートと旋律——nujabesの遺伝子を継承するマルチ・プレイヤーが、激動の時代を経て辿り着いた新世界!

Uyama Hiroto 『freedom of the son』

 〈hydeoutnujabes〉と言っても差し支えがないほど、hydeoutの作品にはレーベル主宰者であるnujabes自身のカラーが色濃く反映されていたわけだが、その歴史においてはパートナーと呼べるクリエイターが常に存在していた。レーベル創設当初はMonorisick(現DJ DECKSTREAM)がその役を担っていたが、やはり真っ先に思い浮かぶのは、nujabesの晩年まで盟友として活動を共にしたトラックメイカー/マルチ・プレイヤーのUyama Hirotoだろう。nujabesの初作『Metaphorical Music』への参加を皮切りにhydeout所属アーティストとして活動を開始し、2008年に同レーベルより処女作『a son of the sun』をリリースしたUyamaは、Shing02を迎えたnujabesの人気曲“Luv(sic)Part 6”のリミックスをはじめとするhydeout周辺のプロダクションを手掛けながら、決して多作とは言えないものの自身の楽曲も発表し続けてきた。

Uyama Hiroto freedom of the son roph(2014)

 その『a son of the sun』から実に6年の時を経てリリースされた今回のセカンド・アルバム『freedom of the son』は、前作からおおよそ地続きな作品だと言える。冒頭を飾る“81autumn”は、前作収録の“81summer”に続く〈81〉シリーズの楽曲。同じようにピアノの音色を軸としながら、爽快な夏から郷愁を感じさせる秋へと季節を移している。また、12インチで先行カットされた“Waltz For Life ~song for children~”は、こちらも前作に収録された“Waltz For Life Will Born”のネクスト・ステップ。生まれてくる生命に向けたワルツが、誕生した我が子へ送る人生のスピリチュアル・ワルツへと続いているというわけだ。

 そして、Uyamaの描くサウンドスケープをそのまま視覚化したかのようなFJDのアートワークも前作と地続きと言えるが、それは決して平坦な流れにあるものではない。今作のアートワークはまるで前作以降の激動を経た現在を表すかのように混沌としており、“Compass”に見られるトライバルな要素、“Reminiscence Jazz”“Become One Live Sun”あたりに顕著なスピリチュアル・ジャズなど、本作で初めて顔を見せる部分を含めた彼の2014年の心象風景をも表現しているのだろう。

 また、前作では最小限に留められていたゲスト勢だが、本作では“Peaceful Quiet”で美声を聴かせるBlu-SwingYu-ri Tanakaに加え、ファイヴ・ディーズファット・ジョンペイス・ロック、さらにサイス・スターといったhydeout作品と縁深いラッパーが多く参加。それによって、nujabesが紡いできたコネクションと、彼のサウンドの根幹でもあったジャズ、そしてフリー・ソウル的な感覚にも通じる日本のリスナー好みのメロディックなアートフォームも引き継いでいる。

 なお、本作をリリースするrophは、Uyamaを中心に、hydeoutを共に築いてきたメンバーによって新しく立ち上げられたレーベルだ。稀代のトラックメイカーであるnujabesのDNAは、彼の他界から年月を経てもなお、脈々と受け継がれているわけだが、今回『freedom of the son』で提示されたスピリチュアルな方向性は、nujabesが見据えつつも具現化し得なかったヴィジョンを踏まえ、そのうえでUyama自身の歩んできた6年間——盟友との別れ、我が子の誕生といった多くの出来事——を詰め込んでアップデートしたもの。つまり、Uyamaの現在がそのまま『freedom of the son』なのだ。

 

▼nujabesの作品

左から、2003年作『Metaphorical Music』、2006年作『modal soul』、2011年作『spiritual state』(すべてhydeout)
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▼関連作品

左から、Uyama Hirotoの2008年作『a son of the sun』(hydeout)、ファット・ジョン・アズ・モーリス・ギャラクティカの2012年作『Rapture Kontrolle』(Ample Soul)、ファイヴ・ディーズの2008年の編集盤『Table Noise Vol.1-3』(Scratch-N-Mixxx)、Blu-Swingの2014年作『ARRIVAL』(SELECTIVE)
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 ここではUyama Hirotoの関わった近作を紹介! nujabesの死後もhydeoutを支えた彼は、2010年にnujabesのトリビュート盤『modal soul classics II -dedicated to...Nujabes-』(hydeout)に穏やかな“Homeward Journey”を提供。haruka nakamuraが生前のnujabesと制作を進めていた2013年作『MELODICA』(同)にも参加しています。それと並行して、2010年のコンピ『Chill SQ』(スクウェア・エニックス)やBlu-Swingの2013年作『TRANSIT』(DOMO)ではメロウなセンスの光るリミックス・ワークを披露。また、共に新レーベルを立ち上げたhydeout時代からの盟友、Segawa Tatsuyaの処女作となる2014年の7インチ『HugeWave/Silent Of SEMINYAK』(roph)では、演奏に加えてプロデュースも担当しています。 *bounce編集部
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