
冒頭から見せる〈新しいXinU〉
以下、順を追ってざっくりレポートしていくとしよう。開演が近づくとSEが“罠”などXinU楽曲もいくつか手掛けているedblの“septemba”に。ステージ後ろのスクリーンには『A.O.R - Adult Oriented Romance』のジャケットと同じ空港で撮られたXinUの写真が映されている。そしていよいよ開演というタイミングでスクリーン上のXinUがこちらに向かって歩き出した。そんななかでお馴染みのバンドメンバーたち――庄司陽太(ギター)、山本連(ベース)、大津惇(ドラムス)、武藤勇樹(鍵盤)、Haruna(コーラス)がステージに登場し、最後に主役のXinUが。
オープナーはエレポップ調のサウンドで新境地を開いた“バタフライ”。ラインの入ったパンツと水色のフーディーという動きやすいカッコのXinUは、マイクスタンドを握ってステージを動きながら歌い出した。さながらロックシンガーのよう。
「LIQUIDROOM、みんなの声を聞かせて!」と言い、続けて歌い始めたのは未発表曲の“80’s(仮)”。未発表とはいえ、ワンマンライブでは1年以上前から何度か歌われてきたもので、XinU楽曲のなかではこれもロック色の強い曲だ。以前はa-haの“Take On Me”、あるいはザ・ウィークエンドの“Blinding Lights”を想起させるイントロだったが、今回はアレンジがアップデートされていた。“バタフライ”と“80’s(仮)”。80年代エレポップ風という意味で確かに通じ合うこの2曲で始めたところに〈最初に新しいXinUを見せるのだ〉といったような気勢も感じられた。終盤で庄司のギターと大津のドラムが激しさを増した。

明るいグルーヴで会場の温度はさらに上昇
ムードを変えて3曲目はハンドマイクに持ち替えての“ただそれだけ”。「何も言えない 何も言わない」とXinUが静かにアカペラで歌い始め、途中からビートやギター音も加わる。終盤ではXinUがかなりのハイトーンでR&B的な歌い回しも。そして「ようこそLIQUIDROOMへ。『A.O.R - Adult Oriented Romance』……2ndフルアルバム、リリースしました! 一緒に揺れましょう。まずはこの曲」と言って軽快なタッチの“余裕綽々”を。ハイトーンが映える。それから“愛おしいままで”“Hora Hora”と自然にカラダの揺れるゆるやかなグルーヴの曲が続く。“Hora Hora”ではHarunaのコーラスがよく映えた。

7曲目“Kiss Kiss Kiss”は初めてMori Zentaroがプロデュースを手掛けた曲で、ハウスミュージックをポップに落とし込んだもの。生バンドではハウス色をやや抑えた分、ここから登場した海野あゆみのサックスが前に出ており、XinUはといえばこの速いテンポに歌を乗せることを楽しんでいるようだったし、観客も手拍子をしてノっていた。曲途中からはダンスアーティストグループGANMIのメンバーであるAOIとO.S.Mが登場してダンス。
続く“合図 EYE 合図”ではAOIとO.S.Mと入れ替わるように同じくGANMIからshunとDysonが登場し、XinUは観客に「みんなも踊れる?」と煽る。間奏では海野のサックスソロ→shunのダンスソロ→庄司のギターソロ→Dysonのダンスソロ→サックスソロ→大津のドラムソロ→ギターソロと続いていき、このバンド、このゲストたちだからこその明るいグルーヴで会場の温度をさらに上昇させたのだった。
賑やかな盛り上がりのあとは、アンビエント風のトラックに透き通ったXinUのボーカルが乗る“ア・ラレイ”。シンセ音が湖の波紋のようにスーっと広がり、神秘性を帯びながら展開する。後半、武藤の優雅なピアノが景色を映し出すかのように鳴り、一瞬の沈黙のあとに大津のドラムがダダダダっと入ってXinUが「歩き続けてみようか」と意思を乗せた歌を続けたあたりもドラマチックだった。