
自分が素晴らしい音楽だと思うものを大切に聴いてくれる人は絶対いる
──その家主を表舞台に引っ張り出したのが、NEWFOLKの大きな功績のひとつだと思うんです。
「家主としてはライブはほとんどしてなかったですけど、当時ヤコブくんや岡本さんはラッキーのライブや録音時におけるサポートメンバーだったこともあって、2015年のライブ以降は顔を合わせる機会が多かったんです。世代も割と近くて面識もあったから、単純に話しやすかったんじゃないかなとは思います(笑)。
家主って、まず曲が最高じゃないですか。僕が考える良い曲、良いメロディのハードルはそんなに低いものではないと思うんです。トッド・ラングレンとかヘロン(イギリスのバンド)、それこそティーンエイジ・ファンクラブとかそういう僕の大好きなレジェンドたちと比べて聴いたとしても〈めちゃ良いじゃん〉と思えるものを世に出したい。家主は、そういったアーティストと並べても遜色がない音楽だと思っています。
そもそも、一般的な認知度や評論家の講釈は関係なくて、こんなに良いのに評価されないとか聴いてくれる人がいないなんて考えられない。逆にいえば、自分が良いと思って出したものを誰も聴いてくれないような世の中になっちゃったら、終わりかな。絶望です(笑)。でも、そんなことはきっとないじゃないですか。自分が素晴らしい音楽だなと思えるものを評価してくれる人や大切に聴いてくれる人は世の中には絶対にいる。そういう人に届けばいい、という感じ。絶対届くっしょ、という自信もある。そう思ったので〈アルバム作ろう〉って持ちかけたんです」
──そこで変に言葉を盛って話すような部分が須藤さんにないから熱意が伝わった、というのもありますよね。田中ヤコブというミュージシャンの信頼を得るのはそんなに簡単じゃないと思う。
「それはヤコブくんもそうだし他のアーティストに対しても言えることですけど、僕自身がすごく彼らのファンだから。手前味噌ですけど、録ってる新曲を聴いて、たまに泣いちゃいますもん」
中途半端なもの、良い作品と思えないものは出したくない
──NEWFOLKは、マネジメントというほど各バンドをがっちり管理しているわけではない。ある意味、放牧に近い環境……なんですけど、バンド愛はすごいし、品質管理がすごくしっかりしている。
「いわゆる制作ディレクター、A&Rと呼ばれてる人たちの範疇は完全に超えちゃってるかなと思います。制作進行やプロモーションに加えて、僕が自分でライブ制作やデザインもするし、アレンジや演奏の仕方とかについても提案が必要かな?と思ったら、こちらから言うこともあります。もちろんマネジメント的なスケジュール管理や窓口業務もやりますし。
ただ、そのバンドやアーティストにとっていちばん大きい幹になる部分に関しては、できる限り本人たちの意向を尊重していきたいし、どういう人に聴いてほしいか、どれくらいのスケール感で活動していきたいかということについても本人たちの気持ちは大事にしたい。とはいえ、作品として中途半端なものは出したくない。〈良い作品だ!〉と思えないと絶対に出したくないから、そのために徹底的に話し合ったりしますね」
──いちばんのファン、いちばんのリスナーがレーベルオーナーとして身近にいたら、バンドも手が抜けなくなりますよね。
「そうなんですよ。例えばライブのリハのときにバンドのマネージャーやスタッフが見てないなんて信じられない。リハを見ないでパソコンを打ってるとかね(笑)。そこはおろそかにしちゃいけないところですよ。強い言葉でいうと、そういう人は軽蔑してます。ライブってそのとき一度きりのお客さんもいるのに、なぜその機会をスタッフが大事にしないのかなと思っちゃう」
──須藤さんは全部のバンドを聴きたいんだよね(笑)。音楽に貪欲な人がレーベルをやってるというのが、いちばん良いことですよ。
「バンドがみんなそれぞれ自分たちのことを深く考えて、あらゆる部分を自分たち自身でコントロールして活動していけるのなら、それがいちばん良いと思ってます。ただ、僕がアドバイスしたり手伝う余地があるのなら、サポートをし続けたい。当然、バンドが自分たちでチャレンジしたいことがあるなら尊重したいし、他のパートナーと組むとなったら去る者は追わず、背中を押したい。
それと最近、うちのアシスタントとして手伝ってくれる人たちも、やがてはNEWFOLKという名前をうまく使ってくれたらいいと思っているんですよ。逆に〈やりたいことがあるけどNEWFOLKには合わないな〉と思うんだったら何か新しい名前で始めてほしいとも思っているので」
