フランツ・フェルディナンドが待望のニューアルバム『The Human Fear』をリリースした。フランツらしさを受け継ぎながらテーマ的にも音楽的にも新たな挑戦をし、ポジティブなムードに満ちた快作は早くも高い評価を得ている。そんな新作のリリースを記念して、日本のアーティストたちに〈フランツ・フェルディナンドと私〉というテーマで思いを綴ってもらった。第2回に登場してもらうのはbringlifeのnaked under leatherことnul。 *Mikiki編集部
フランツ・フェルディナンドと私
by nul (bringlife)
「フランツ・フェルディナンドの良さが分からない」と言う人はいるのでしょうか。自分の趣味ではないから聴かないという人はいるでしょうが、フランツ・フェルディナンドの音楽を聴いて、彼らを好きになる理由が分からない人、というのはあまり想像できません。書きながら思ったのですが、〈良い〉音楽とはなんでしょうか?
1. 初めて行ったライブが、国際フォーラムでのフランツ・フェルディナンド来日公演であり、
2. メアド(死語?)やmixi(死語?)、Twitter(死語?)のSNSアカウント名など、若い自分がほぼ公的に名付け親となれるもののほぼ全てにフランツ/Franzと入れていた。
3. 彼らの3rdアルバム『Tonight』を購入後、わざわざ深夜までCDを開けるのを待っていた。
そんな過去を不思議と今も抱えている私から申し上げるならば、フランツ・フェルディナンドの最大の魅力は、〈分かりやすさ〉に尽きます。
彼らがリードした、(振り返ると不思議なワードに思える)〈ポストパンク・リヴァイヴァル〉ブームの渦中を過ごしたバンドの名前が、刻一刻と人類の大脳皮質の奥へと追いやられていく中、2025年を迎えた今も、フランツ・フェルディナンドは新たなアルバム『The Human Fear』をリリースし、Gファンクやティンバランド風味の楽曲をバンドで再現する挑戦もしています。
小学生の頃、私は音楽も楽器も全く興味がありませんでしたし、音楽にハマることなどないと思っていました。それが中学1年生の時、フランツ・フェルディナンドの“Do You Want To”をCMで耳にしてから、なんならその〈直後〉から今に至るまで音楽を聴き続け、いつの間にか人前でラップしたり、自宅で徹夜でビートを作っていたりするのでした。それも彼らの〈分かりやすさ〉から始まったことです。
冗談混じりに、〈女の子を踊らせるためのバンド〉というコンセプトが、フランツ・フェルディナンドにはありました。それはある意味至言であり、宇宙の理の一つであるファンクを思い出します。多くのポストパンクのバンドが、その楽曲構造の性質上ネガティビティにシリアスさを見出しそうになるところ、フランツ・フェルディナンドは徹底して楽観的、軽薄であり続けているように思います。妙な官能性の演出も、聴いているこっちは笑えるし、楽しい。シングル“Take Me Out”のタメとビートチェンジも面白いし、楽しい。“Do You Want To”なんかずっと面白いし、楽しい。開き直りではありません。特に当時のバンドシーンにおいて、女の子を踊らせると言い切り、軽薄であり続けるのは、とても勇ましいことだったのではないでしょうか?
*注釈しておくと、彼らは所謂欧米のバンドやポップミュージックだけを聴いていたわけではなく、私が彼らのディスコグラフィー内で最も愛聴したアルバム『Tonight』発売時は、エチオピア音楽からのリファレンスを語っていましたし、全曲ダブ・バージョンのリミックスアルバムを出していたり(結構良い)、アシッドハウスを彷彿とさせる“Lucid Dreams”という7分ほどの楽曲があったりします。私を、ロックだけでなく、枝葉のように広がる音楽の数々へと誘ってくれました。
そういえば、私は下北沢のアコムで、自分がいくら借りているのかを初めて両目でちゃんと確認した時もありました。「なぁ〜っっ」と思いながら、とりあえずコンビニでビール購入。ノスタルジアにでも陥いったのかふと再生した“Do You Want To”では、あまりに無意味でひたすらに楽しそうなフック、終盤では「Lucky! Lucky! You’re So Lucky!」とメンバーみんなで連呼しています。自分の開き直りの早さを思い出しました。そう、何度も何度もこれまでも開き直って、今ここまで来ています。当時、いろんなロックバンドがいましたが、中でも自分がフランツ・フェルディナンドに夢中になったのには、何か理由があるのだと思います。
RELEASE INFORMATION
リリース日:2025年1月8日(水) ※日本先行発売
■CD・Tシャツ付きセット
品番:BRC769T
価格:7,700円(税込)
■LP・Tシャツ付きセット
品番:WIGLP495XBRT
価格:10,390円(税込)
■国内盤CD
品番:BRC769
価格:2,860円(税込)
■輸入盤CD
品番:WIGCD495
価格:2,690円(税込)
■タワーレコード限定 直筆サイン入りアートカード付きCD
品番:BRC769TR
価格:2,860円(税込)
■通常盤LP
品番:WIGLP495
価格:4,890円(税込)
■限定盤LP(ホワイトヴァイナル)
品番:WIGLP495X
価格:5,290円(税込)
■タワーレコード渋谷店限定 カセットテープ
品番:WIGMC495
価格:2,690円(税込)
TRACKLIST
1. Audacious
2. Everydaydreamer
3. The Doctor
4. Hooked
5. Build It Up
6. Night Or Day
7. Tell Me I Should Stay
8. Cats
9. Black Eyelashes
10. Bar Lonely
11. The Birds
12. It’s Funny *Bonus track
PROFILE: FRANZ FERDINAND
2003年5月にドミノと契約し、1stシングル“Darts Of Pleasure”をリリース。2ndシングル“Take Me Out”は世界中で爆発的な成功を収め、フランツ・フェルディナンドの名を世界に轟かせた。その名を冠したデビューアルバム『Franz Ferdinand』は全世界で500万枚以上のセールスを記録。アーティストとして常に前進を続け、『You Could Have It So Much Better』(2005年)、『Tonight: Franz Ferdinand』(2009年)、『Right Thoughts, Right Words, Right Action』(2013年)、『Always Ascending』(2018年)といったアルバム作品を世に送り出し、フランツ独自のサウンドスタイルを築き上げると同時に、ダン・キャリー、ホット・チップのジョー・ゴダードやアレクシス・テイラー、トッド・テリエ、フィリップ・ゼダールら最も先駆的なプロデューサーたちと仕事をしている。彼らの音楽は世界的に反響を呼び続け、約20年の間に商業的にも評価的にも世界最大のUKバンドの一つとなった。アルバムセールスは1,000万枚を超え、現在までにストリーミング回数は25億回、14枚のプラチナアルバムをリリースしており、ブリット・アワード、アイヴァー・ノヴェロ、マーキュリー・プライズ、さらにはグラミー賞にもノミネートを果たしている。レディング&リーズ、ロック・アン・セーヌ、プリマヴェーラ、オール・ポイント・イーストといったフェスティバルでのヘッドライナーを含む煽情的なライブショーのチケットは世界中で600万枚を売り上げを記録。2022年にリリースされたグレイテストヒッツ作品『Hits To The Head』は、彼らの楽曲の多くがいかに普遍的で愛されてきたかを思い起こさせるものであり、イギリスではロンドンのアレクサンドラ・パレスを完売させるなどUK音楽史上最も重要なバンドとしての地位を確立している。