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時間を共にしてきたから

 そんな今作のプロデュースは、近年もラスト・ディナー・パーティーやフォンテインズDCらを手掛ける重鎮ジェイムズ・フォードが担当。ライヴに近い録音を常道としてきたBC,NRが新しい道に進むための道標としては適任だったようだ。

 「信じられないくらいすごい機会に恵まれたという感じだった。私たちの多くは彼の手掛けた作品をいろいろ聴いてきたし……これまでのどのアルバムより、彼と組むのは今回がもっとも理にかなっていた気がする」(メイ)。

 「とりわけ僕とメイは、ジェイムズのプロデュースした音楽を本当に楽しんできたからね、もっと若かった頃に……と言うと彼は嬉しい顔をしないだろうけどね(笑)。彼のように著名なプロデューサーと組むのは初めてだったけど、〈自分の刻印〉みたいなものを残したがるようなところも一切なかったし、僕たちの目標達成を促進してくれるような人だった。バンドの良い点のひとつって、メンバーそれぞれが求めるものの中間点や落としどころを見つけることで興味深いものが生まれるところなんだけど、ジェイムズはそのバランスを突き止めるのに非常に長けているんだと思う。本当に満足した経験だった」(チャーリー)。

 そうしたバランスから生まれた楽曲群は、各人の個性とアイデアの結晶だ。局面によっては歌唱者のシンガー・ソングライター的な顔も味わえつつ、フォーキーな展開から飛躍していくジョージア主導の“Two Horses”、壮大なバロック歌劇のように視界が開けるメイ主導の“For The Cold Country”、変拍子で迫るタイラー主導の“Nancy Tries To Take The Night”などバンド演奏の豊かな彩りで飽きさせない。表題曲では歌うメイ以外の5人がリコーダーを吹いていたりもする。

 「〈これらをどうまとめればいい?〉という心配はあった。だけど、〈もっとまとまりのあるアルバムにするために、私はこれについての曲を書きます〉なんてふうにはいかない。それと同時に、もちろん各々の暮らしや人生は違うけど、生活圏や経てきた体験という意味では、一緒にツアーに出て、さんざん時間を共にしてきたから、私たち3人はかなり似ている。だから、アルバムに入った曲にも、似たようなことが別の言い方で浮かび上がっているように感じる。そうじゃない曲もあるけど(笑)」(メイ)。

 そんな発言については、ジョージアも「3人の女性メンバーが歌うことで、アルバムに一貫したテーマが生まれた」と認めるところだ。そして、その一貫性が説得力を持ってアルバムの形を構築しているのは、どの曲でも6人が力を結集したからに違いないし、そんな『Forever Howlong』はこのバンドの前途を照らすはずだ。控えめに言っても最高傑作の誕生である。 *出嶌孝次

ブラック・カントリー・ニュー・ロードの作品。
左から、2021年作『For the first time』、2022年作『Ants From Up There』、2023年のライヴ盤『Live At Bush Hall』(すべてNinja Tune)

メンバーの参加作を一部紹介。
左から、チャーリー・ウェインが参加したイーサンP・フリンの2023年作『Abandon All Hope』(Young)、ルイス・エヴァンスが参加したダネシェフスカヤの2023年作『Long Is The Tunnel』(Winspear)、タイラー・ハイドが参加したスカイダディの2025年作『Anchor Chains, Plane Motors & Train Whistles』(Bathtime Sounds)